LIZARD / KING CRIMSON(リザード/キング・クリムゾン)

2020年4月17日

 

LIZARD / KING CRIMSON

1. Cirkus-(Including Entry Of The Chameleons)

2. Indoor Games

3. Happy Family

4. Lady Of The Dancing Water

5. Lizard:
Prince Rupert Awakes/Bolero-The Peacock’s Tale/The Battle Of The Glass
Tears/Big Top…

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

 1970年発表のサード・アルバムが「LIZARD(リザード)」。

 クレジットは

ロバート・フリップ – ギター、メロトロン、キーボード
メル・コリンズ – サックス、フルート
ゴードン・ハスケル – ボーカル、ベース
アンディ・マカロック – ドラムス
ピート・シンフィールド – 作詞、映像

ゲスト・ミュージシャン

ジョン・アンダーソン – ボーカル(on "Prince Rupert Awakes")
キース・ティペット – ピアノ、エレクトリックピアノ
マーク・チャリグ – コルネット
ニック・エヴァンス – トロンボーン
ロビン・ミラー – オーボエ

 前作「IN THE WAKE OF POSEIDON(ポセイドンのめざめ)」の一部にゲスト参加したフリー・ジャズ・ピアニスト キース・ティペットが、本作では自分のバンドのメンバー(マーク・チャリグ、ニック・エヴァンス)も引き連れて全面参加。また、イエスのジョン・アンダーソンもゲストで1曲参加しています。

 全ての曲はロバート・フリップとピート・シンフィールドの共作とクレジットされています。プロデュースもこの2人。

 アルバム・ジャケットは収録曲のコンセプトをもとに描かれているのでしょう。KING CRIMSONという文字をそれぞれモチーフにしたカラフルな絵が並んでいます。中には西洋のリザード ジャケット中世の騎士と日本の鎧を着た武士が闘っているような絵も描かれており、新しい画調で面白いです。

 評価は分かれてていて、大勢は低い評価のようですが、私は悪いアルバムではないと思います。ゴードン・ハスケルは前作では1曲だけ歌っていましたが、今回は1曲以外全部リード・ボーカルを取っています。前作よりうまくなっていると思います。

 しかし、この3枚目もバンドというより、ロバート・フリップとピート・シンフィールドのコンセプトで他のアーティストが協力して作ったユニット的なアルバムと考えるほうが正解だと思います。

 前作と違うのは、バランスの良さです。

 3枚目まで通して聴いてみると、それぞれのアルバムのテーマは違っていますが、形式面と言いますか、展開や表現の手法は同じように思います。だからか、このアルバムを初めて聴いた時も「どこかで聴いた曲」というような印象があるのです。
 ただ前作がまさにデビュー・アルバムの2匹目のドジョウを狙ってドツボにハマったのと違って、このアルバムは新しい面が見えて来ているのもたしか。ホーンセクションは相変わらず、意識的に不協和音のような音を出しているのですが、ディストーションの効いたギターの音が全体を通して、聞こえて来ないのは不協和音のホーンと対比させる手法かも知れません。

 1曲目“Cirkus”・・・サックスやコルネット(トランペットに似た楽器)も入りますが、メロトロンもかなり弾いてます。ドラムスの変則リズムもアコースティック・ギターも前2作と似たような感じ。

 2曲目“Indoor Games”・・・かなりひょうきんなホーンセクションで始まるジャズっぽい曲。最後は笑い声。今イチ盛り上がりに欠けるように思います。

 3曲目“Happy Family”・・・メル・コリンズのフルートがフューチャーされた曲。この曲もかなりジャズ。

 4曲目“Lady Of The Dancing Water”・・・この曲もメル・コリンズのフルートがフューチャーされています。スローなバラード。

 5曲目“Lizard”・・・第1楽章の“Prince Rupert Awakes”はYESのジョン・アンダーソンがリード・ボーカル。さすがにうまいですね。ジョンはロバート・フリプにYESのギタリストにならないかと誘ったそうですが、ロバート・フリップに逆に、うちのバンドのアルバムで歌ってくれないかと誘って、歌ってもらったのがこの曲。

 第2楽章の“Bolero-The Peacock’s Tale”はインストゥルメンタル。コルネットとオーボエの音が清々しいです。しかし、途中から不協和音が入り、ジャズっぽくなるというパターン。そしてまた最後のほうでオーボエが清々しく響き、ティンパニーが仰々しく入り、エンディング。

 第3楽章“The Battle Of The Glass Tears”・・・ホーンセクションが暴れ出し、メロトロンも流れ、仰々しい感じがしますが、一番KING
CRIMSONらしい曲と言えるでしょう。

 第4楽章“Big Top”・・・インストゥルメンタル。“Lizard”自体“トカゲ”という意味ですので、全体を通しておどろおどろしい音楽になっているのですが、この章はエンディングということもあって比較的静かで、和やかになっています。

 ピート・シンフィールドの詩ははやり、哲学的で難解ですが、曲調には似つかわしいと思います。ロバート・フリップ自身、前作の満足度が75%なら、このアルバムは95%の満足度と言っていることからも、このアルバムの完成度は高いように思います。スペース感を感じたいなら、5.1ch用にリミックスされているDVD盤を聴くとより、空間を感じて本作品の良さを実感できると思います。