IN THE WAKE OF POSEIDON / KING CRIMSON(ポセイドンのめざめ/キング・クリムゾン)
1. Peace- A Beginning 2. Pictures Of A City 3. Cadence And Cascade 4. In The Wake Of Poseidon 5. Peace- A Theme 6. Cat Food 7. The Devil’s Triangle 8. Peace-An End ※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。 |
第1期KING CRIMSONはデビュー・アルバムで崩壊してしまいました。とはいえ、どの時代をもって何期という言い方は少なくてもKING CRIMSONではかなり意見が分かれているのも事実。だから、デビュー・アルバム後イアン・マクドナルドとマイケル・マクドナルドは脱退(ただし、複雑なことにマイケル・マクドナルドは正式なメンバーではないのですが、このセカンド・アルバムのレコーディングには参加しています)。そして、グレッグ・レイクもEMARSON , LAKE & PALMERを結成することを見据えつつ、ボーカルだけで参加など、複雑な大人の事情となっています(契約上、どうしても1970年のアルバムを1枚発売しないといけなかったため)。
とりあえず、クレジットされているのは、
ロバート・フリップ – ギター、メロトロン
グレッグ・レイク – ボーカル
ゴードン・ハスケル – ボーカル
メル・コリンズ – サックス、フルート
マイケル・ジャイルズ – ドラムス
ピーター・ジャイルズ(マイケル・ジャイルスの弟) – ベース
キース・ティペット – ピアノ
ピート・シンフィールド – 詩
となっています。グループの体は成してなく、ユニットとみたほうが正解かも知れません。イアン・マクドナルド脱退のため、メロトロンはロバート・フリップが担当してますね。
さて、アルバム・ジャケットに関しては、デビュー・アルバム同様、バリー・ゴッドバーに依頼する予定だったようですが、急逝したので、他の人に頼んだようです(クレジットが解読しづらいので名前は省略)。
さて肝心の作品のできはどうでしょう?
デビュー・アルバムがあまりにできがよかったので、この「IN THE WAKE OF POSEIDON(ポセンドンのめざめ)」は地味なアルバムとか、駄作だという評判ばかり。どこが違うかと言えば、デビューアルバムがメンバー全員がプロデュースとクレジットされていたのに、今回はロバート・フリップとピート・シンフィールドのみ。
あとはイアン・マクドナルドがいるか、いないか。たしかにデビュー・アルバムで一番ガンバっていたイアンがいないというのは大きいでしょう。音のバランスなども、デビュー・アルバムのほうがかなりよいように思われます(ただし、曲はイアン・マクドナルドなどが在籍していた頃にすでにできていて1969年のイギリス・ツアーやアメリカ・ツアーで演奏されていた曲もあるので、イアンの作品も含まれています)。
なお、アルバムの邦題は「ポセイドンのめざめ」となっていますが、これは“wake”を目覚めると思った担当者の誤訳で「in the wake of」は実際には「~のあとを追って」という熟語になるそうです。ですので邦題は完全に誤りです。そもそも目覚めるならwakeは動詞になるはずで動詞にtheが付く時点で変ですね。ま、今でも邦題は「ポセイドンのめざめ」のままですので、ここでも便宜上そう書いていますが・・・
1曲目“Peace- A Beginning”・・・ロバート・フリップ作曲、ピート・シンフィールド作詩。序曲です。静寂の中から聞こえる声。真夜中の闇夜の中で、人形が勝手に踊っているような不気味な印象。ジャケットもそんなイメージですね。
2曲目“Pictures Of A City”・・・ロバート・フリップ作曲、ピート・シンフィールド作詩。アルト・サックスがいきなり響きます。グレッグ・レイクのボーカルはかなりイコライザーをかけているようです。イメージとすればデビュー・アルバムの“21st Century Schizoid Man”と同じように騒々しい、せわしない曲ですね。ドラムスでいったんブレイクする前までは。
3曲目“Cadence And Cascade”・・・ロバート・フリップ作曲、ピート・シンフィールド作詩。この曲だけリード・ボーカルはゴードン・ハスケル。グレッグ・レイクより線が細いことは否めません。ゴードン・ハスケルはロバート・フリップの幼なじみだったといいます。次のアルバム「LIZARD」では彼がリード・ボーカルをほとんど取っているのですが、1枚で首になって、ロバート・フリップから嫌われたそうです。
アコースティック・ギターをフィーチャー静かな曲ですが、どうもピンと来ません。あとでグレッグ・レイクがボーカルを取っているバージョンも発表されています。こっちのほうがいいのになぜ使わなかったのかは疑問です。
YOU TUBEではグレッグ・レイクバージョンも聞けます⇒ここから
4曲目“In The Wake Of Poseidon”・・・ロバート・フリップ作曲、ピート・シンフィールド作詩。邦題は“ポセイドンのめざめ”となっていますが、wikipediaによるとこれは名詞wake(航跡)と動詞wake(めざめ)を取り違えたために生じた誤訳だとのこと。本来のアルバムタイトルの意味は「ポセイドンの跡を追って」、「ポセイドンに続いて」となるそうです。
デビュー・アルバムの“Epitaph”に匹敵する名曲との声も高いようですが、“Epitaph”よりも淡々としていて盛り上がりに欠けるきらいもあると思います。アコースティック・ギターが入る点、メロトロンがストリングスを奏でる点は“Epitaph”と同じですね。
5曲目“Peace- A Theme”・・・再びテーマ曲がアコースティック・ギターだけで演奏されます。詩はないのにロバート・フリップとピート・シンフィールド作というクレジットになっています。短い曲ですが、かなり高等テクのいる曲でです。
6曲目“Cat Food”・・・ロバート・フリップ、イアン・マクドナルド、ピート・シンフィールドの共作となっています。ゲスト参加のジャズ・ピアニスト、キース・ティペットの奏でるピアノがいかにもモダン・ジャズって感じです。不協和音がバリバリ・・・。ギターもジャズですね。でも、ベースのメロディはTHE BEATLESの“Come Together”っぽいです。
最近改めて聴くとなかなか凝った音作りだと思いますが、私は昔はこの歌のさびの“Cat food”を連呼する箇所が凄く嫌いでした。最近のコンサートではこの曲もよく演奏されているようです。
7曲目“The Devil’s Triangle”・・・ロバート・フリップ、イアン・マクドナルド作。原曲はホルストの「惑星」の中の一曲“火星”ですが、アルバム発表当時ホルストの親族からタイトルの使用許可がでなかったために、構成を一部変更の上に改題されたのだそうです。ジャズっぽいアレンジですが、ドラムスの音がちょっと出しゃばり過ぎのように思います。
8曲目“Peace-An End”・・・ロバート・フリップ作曲、ピート・シンフィールド作詩。最後の不気味な静寂の中に終わって行きます。“Peace is the end,Like death of the war.(平和は終わる。戦争が破滅したように)”という言葉が混沌とした世の中を暗示するかのようで、救いようのない詩です。
やはり、アルバムのまとまりやコンセプトということを考えると、デビュー・アルバムとは雲泥の差があるように思います。核となる名曲が“In The Wake Of Poseidon”しかなく、私にとっては、繰り返して聴きたいという意欲に駆られないアルバムです。
このアルバムは今のところ、結成30周年と結成40周年記念のリマスター盤が入手可能です。オリジナルのマスターの曲やリマスターの5.1chも聴いてみたいというかたは40年記念のCD+DVDオーディオの2枚セット盤をオススメします。
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