SHADES OF DEEP PURPLE / DEEP PURPLE (ハッシュ/ディープ・パープル)

2020年5月2日

 

Shades Of Deep Purple

SHADES OF DEEP PURPLE/DEEP PURPLE

 

 

1. And The Address

2. Hush

3. One More Rainy Day

4. Prelude: Happiness/I’m So Glad (Medley)

5. Mandrake Root

6. Help

7. Love Help Me

8. Hey Joe

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

※ジャケットは発売された国や時期によって各種あるので、ご了承ください。当ページでは本国イギリスで発売されたEMIレコードバージョンを使っております。 

 さて、DEEP PURPLEというといわゆる第2期、つまりイアン・ギランやロジャー・グローバーが在籍したハード・ロックギンギンの時期を思い起こされるかたが多いと思います。

 しかし、DEEP PURPLEを語るのならばそもそもの結成当時のことも書かないワケにはいかないでしょう。DEEP PURPLE I-1

 いろんなバンドを結成したり、セッションを繰り返していたギタリストのリッチー・ブラックモア、THE ARTWOODやFLOWERPOT MEN等で活躍していたキーボードプレヤーのジョン・ロード、そしてSEACHERSのメンバーだったヴォーカリストのクリス・カーディス。この3人がひっそりと活動を開始したのが、DEEP PURPLEの始まりでした。その後、クリスが脱退し、デイヴ・カーチス(vo,B)とボビー・ウッドマン・クラーク(Dr)が加わりリハーサルを続けていたが、この2人も技量が合わず首となり、FLOWERPOT MENに在籍していたニック・シンパー(B)、MAZEに在籍していたロッド・エバンス(Vo)とイアン・ペイス(Dr)が加わって、第1期DEEP PURPLEのメンバーがそろうことになります。

 当初彼らはROUNDABOUTというグループ名で活動していました。そして当時彼らに興味を示したアメリカの小さなレコード会社“Tetragrammaton”と契約を交わしてグループ名をDEEP PUERLEと変えたのでした。その名前は、ブラックモアの祖母が好んでいたピーター・デローズ(Peter De Rose)というピアニストの同名の曲から付けられたと言われています。

 1968年6月にドラッグの一種を歌った“Hush”でデビュー。この曲は彼らの本国イギリスでは不発に終わったが、アメリカでは4位まで上昇し、人気を得ることになります。その結果、DEEP PURPLEは当初アメリカを本拠地として活動を始めることになったのです。

 そして、ついに1968年7月に発売されたのがこのデビューアルバム「SHADE OF DEEP PURPLE」です(ビルボード誌最高チャート24位)。

 第1期はキーボードのジョン・ロードがイニシアティブを握っており、アルバムの色もジョンの考え方が前面に出ています。日本ではこの頃のDEEP PURPLEをアート・ロックという呼び方をしていたようです。

 第2期のイメージで聴くと拍子抜けするようなポップな仕上がりで、8曲中4曲がカバーソング。しかし、ロッド・エバンスの声はなかなかポップでキャッチーなサウンドと言えると思います。

 個人的には結構好きなアルバムです。ジョン・ロードはアメリカで人気を博していたキーボードをフィーチャーしたVANILLA FUDGE(ヴァニラ・ファッジ)のようなグループを目指していたようです。

アメリカツアーへ向かうパープル

 1曲目の“And The Address”はなかなかかっこいいインストゥルメンタルの曲で、クラシックを思わせる複雑な曲調で楽しいです。初期のライブではよく演奏されていました。「DEEP PURPLE IN ROCK」に収録されている“Speed King”ではイギリス盤の導入部でのこの曲の一節が使われています。

 2曲目の“Hush”はジョー・・サウスという人がヒットさせたビリー・ジョー・ロイヤルの作品。たしかにイギリス人よりアメリカ人が好みそうな曲調です。ギランとグローバーが再参加して再結成DEEP PURPLEでもリメイクされて歌われることになりました。口ずさみやすい明るい曲です。ちなみにハッシュとはドラッグの一種です。

 3曲目“One More Rainy Day”もポップな曲調ながら心地よい曲。ロッド・エバンスの声にもよく似合っています。

 4曲目:Prelude: Happiness/I’m So Glad (Medley) メドレー形式にしたのはおそらく沢山曲を入れたかったからでしょう。“Happiness”の始まりは幻想的ですが、キース・エマーソンを意識しったかのような曲調になっています。“I’m So Glad”は黒人のデルタ・ブルース・ミュージシャンJames Skipの作品ですが、Eric Claptonが参加していたCREMがデビューアルバムでカバーしたことで有名になりました。このテイクもCREAMバージョンをモロ意識したしたものとなっています。この頃はリッチーは意識的にセミアコースティックギターを使っていたようで、アコースティックな音が心地よいです。

 5曲目:“Mandrake Root” この曲は第2期のライブでは“Space Truckin’”の中に挿入されて一部演奏されるようになりました。

 6曲目:“Help” THE BEATLESオリジナルの曲を大胆にアレンジしてあり原曲がかなりのアップテンポなのに対して、PURPLEバージョンは前奏部分が長くしっとり(イントロ部分は初期のPINKFLOYDかと思うような効果音です)と、うら悲しい曲調になっており、素晴らしい出来になっています。

 7曲目:“Love Help Me” 珍しくリッチー・ブラックモアのギターで始まる曲で、間奏でもブラックモアのギターソロが聴けます。サイケな音であることは否めませんが、悪い曲ではないと思います。

 8曲目:“Hey Joe” パトカーのサイレンが鳴り響くイントロ。リッチー・ブラックモアのギターはRAINBOW時代のフレーズっぽかったりします。ジミ・ヘンドリックスの曲を大胆アレンジしてますが、歌が始まると急にしっとりした曲調に変わります。

 全体を通してロッド・エバンスはいい歌歌っていると思います。いかんせん、DEEP PURPLEが特に第1期はインストゥルメンタル重視だったので、その良さを発揮できぬまま首になり、CAPTAIN BEYONDというグループを結成したもののこれもあまりパッとしないままで終わり、そのままおとなしくしていれば自分が関わった分のPURPLE名義の印税の分け前も受けられたのに、1980年に勝手にDEEP PURPLEと名乗ってライブをやって訴えられて敗訴という末路。うまくハメられたという話もありますが、何とも無残な終焉です。まだ存命のようですが、その後、表舞台には出て来ていません。