MACHINE HEAD/DEEP PURPLE(マシン・ヘッド/ディープ・パープル)

2020年5月3日

 

MACHINE HEAD/DEEP PURPLE

 

1. Highway Star

2. Maybe I’m A Leo

3. Pictures Of Home

4. Never Before

5. Smoke On The Water

6. Lazy

7. Space Truckin’

 

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

※ジャケットは発売された国や時期によって各種あるので、ご了承ください。ここで紹介しているのはイギリス盤のオリジナル仕様。Wジャケットになっており、紫のインクで印刷された歌詞カードも封入されていました。PURPLEII

 マシーン・ヘッドというのは、ギターやベースのネックの先にある歯車のついた弦を巻き付ける部分のことです(弦楽器の弦をチューニングするための部品の総称なので、バイオリンなどにもマシーン・ヘッドがついています)。Wジャケットの裏のにはロジャー・グローバーのベースのヘッドの部分が写っています。

 さて、この「MACHINE HEAD」が出る頃までにはギターのリッチー・ブラックモアの評判もかなり上がっており、当時ブリティッシュ3大ギタリストと呼ばれていたヤドバーズ出身のギタリスト、エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ページに並べてリッチーの名前も挙げる人が多くなっていた頃でした。

 1969~1971年にかけてDEEP PURPLEのメンバーたちは休みらしい休みもなく働いていたためロジャー・グローバーはノイローゼ気味なり、イアン・ギランは肝炎を患って緊急入院したりしたために1971年の秋~暮れに予定されていた全米ツアーは翌1972年に持ち越されたくらいです。

 前の「FIREBALL」があまりにせわしなく作られたため、この「MACHINE HEAD」は1971年12月スイスのモントリオールにあるジュネーブ湖畔にあるカジノを借りてローリング・ストーンズが所有していた移動式のモービル・スタジオを利用して2週間の予定でレコーディングするつもりでいたようでした。

 ところが、そのカジノの中に作られたステージにフランク・ザッパが彼のバンドのマザーズと出演している時に誰かがカジノにフレアーガン(信号拳銃)で火をつけてカジノの建物が全焼してしまったのです(フランク・ザッパのファンはこういう狂気な人が多いらしく、その1週間後にはロンドンでの公演中に聴衆の一人が乱入しギター・ソロで演奏中のザッパをステージから突き落とす(ザッパは大けがを負って数ヶ月入院してます)という事件が起きています。

 火事が起きたのはPURPLEのメンバーたちはカジノから約400m離れたところにあるバーで飲んでいた時のことでした。メンバーが観たとき、山から吹き下ろした風が煙を吹き払い、炎は湖の上を横切るように横切って行ったそうです。すると煙がっまるでカーテンのように湖にかかり幻想的に見えたそうです。

 その時の模様を歌にしたのが“Smoke On The Water”です。

 PURPLEのレコーディングは初めに楽器演奏だけ先に録音して、最後にイアン・ギランのボーカルはあとでかぶせる方法が通例でした。

 カジノで録音できなくなったため、急遽カジノに近いバビオロンという劇場で、この“Smoke On The Water”の楽器部分は録音されました。ところが録音の音があまりに大きく、地元の警察が演奏を辞めさせようとして来たので、小競り合いの末、なんとか1曲だけ録音できたと言います。

 火事を目撃したロジャー・グローバーは独り言のように、泊まっていたホテルで“Smoke On The Water”とつぶやいたと言います。それを耳にしたイアン・ギランが「まるでドラッグソングの歌詞だね」と茶化したそうです。結局イアン・ギランはそのフレーズをもとに自分たちに起きたハプニングを歌詞にしたのです。

 お蔭でフランク・ザッパ一行は機材を全て焼かれてしまったのですが、こうしてDEEP PURPLEの有名な歌に永遠に名前を刻む栄誉を受けたのでした。そして、この歌がDEEP PURPLEの中では一番売れたシングルとなったのです。何か幸いするか分かりませんね。

 バビオロンを追い出されてDEEP PURPLEは仕方なく、古びたグランド・ホテルをスタジオとして貸し切りにして、レコーディングを無事済ませたようです。冬のスイスは観光客も少なく、空いていたのが幸いしたようですが、古いホテルなので、モニターするためにモービル・ユニットにたどり着くまでが大変な作業だったとか。

 アルバムは1972年5月にリリースされ、全英1位、全米7位を記録(売り上げは300万枚とも言われています)。ところが今度はリッチーが肝炎になったためにツアーの日程が変更となり、初来日公演も急遽、5月から8月に延期されたのです。なお、このアルバムはPURPLEのマネージャー、ジョン・コレッタとトニー・エドワーズの共同出資により(HECエンタープライズというマネージメントをやっていた)パープル・レコーズ(1971年10月設立)からPURPLEのアルバムとして初めてリリースされた記念すべきアルバムでもありました。

 さてアルバムレビューといきます。

 1曲目“Highway Star”・・・この曲を初めて自宅で聴いた時、正直ぶっ飛びました。その様式美もさることながら、リッチー・ブラックモアの華麗なギターソロには一発KOされたって感じです。ジョン・ロードのキーボードソロもそれなりに凄いですが、ギター大好き少年だった私は何よりリッチーのその華麗なギタープレイの正確さ、速弾きには脱帽でした。今でこそもっと速く弾ける人は結構いるでしょうが、このアルバムを初めて聴いた時の衝撃を上回る驚きは一度もないですね。GILLAN LIVE

 毎日学校から帰って来て1回は必ず聴いてましたね。

 2曲目“Maybe I’m A Loe”・・・いやー、この曲も渋いですよね。この曲もリッチーはさりげなくギターを弾いていますけど、味がありますよ。ジョンのキーボードも派手さはないけど、味があるし。この曲は来日前にはステージでもプレイしてたようですが、その後プレイしなくなりましたね。またリッチーが再度脱退してからやるようになってみたいですけど

 3曲目“Pictures Of Home”・・・このリッチーのギター・フレーズもカッコいいです。地味なロジャーがフューチャーされることもあって、これまたリッチー再脱退後のコンサートでは演奏するようになったようですけど、どうしてリッチーってこの曲もあまり好きでなかったのでしょうね?ジョン・ロードのオルガンもいい感じなのにね。

 4曲目“Never Before”・・・このアルバムからシングル・カットされた最初の曲です。キャッチーな曲ですが、ハード・ロック・グループとしてはどんなものなんでしょう?って感じの曲ではあります。アルバムの1曲としてはこんな曲もあっていいかなあー、ってくらいの曲です。

 5曲目“Smoke On The Water”・・・アルバム発売当初はいい曲だなーくらいの印象でしたが、まさかあんなにヒットするとはというくらい全米ではベスト10に入るヒット(ただし、ライブ・バージョンのシングルカット)。ライブでも大切に演奏してましたから、メンバーも思い入れの強い曲なんでしょうね。ギターの印象的なフレーズから始まって、キーボード入り、ドラムが入り、ベースが被さりと徐々に楽器が増えていくイントロが印象的ですね。

 サビ部分は覚えやすいですし、構成力もしっかりとしているので、やはりヒット曲としての条件をよく備えていたってことなんでしょう。今でも多くのロック・バンドがこぞってコピーする不朽の名作となっていることは敢えて書くまでもないでしょう。
  もっともメロディはジャズの“Maria Moite”をパクッたという話です。

 6曲目“Lazy”・・・イントロのオルガンがなんともジャズっぽくってカッコいいですよね。それを受けて入るリッチーのギターもこれまたクールですし、コレまでになかった曲調です。まだまだDEEP PURPLEの可能性は果てしないって思わせてくれた曲でした。

 7曲目“Space Truckin’”・・・宇宙空間を旅するという何とも将来性豊かな曲。この曲も発展させれば可能性十分だと思ってましたが、なんとライブでは延々約20分も続く曲になるとは想像していませんでした。

 この「MACHINE HEAD」はDEEP PURPLEの新たな可能性を感じさせる素晴らしいアルバムに仕上がりました。前作「FIREBALL」が十分時間が取れずに作った中途半端なアルバムになっただけに、このアルバムはメンバーにとってストレス解消ができたアルバムとなったことでしょう。

 もっとも、このアルバムが大ヒットしたことで、彼らのスケジュールはますます過密になり、1972年という年は結成以来一番多忙となりメンバー間に不協和音が生じるようになっていったのですから、皮肉なものです。

 


真ん中のCDはハイブリッドSACDです。2chと5.1chの2パターンのリミックス音源が聴けます。ギターがリア・スピーカーから聴けて、分離度も高いのですが、惜しむらくは音圧が低く、相当ヴォリュームを上げないと聴けないです。

 一番右のCDはハイレゾ(MQA-CD/UHQCD)盤です、MQA対応機器をお持ちのかたはかなり良い音質で聴くことが可能です。