SAILIN’ SHOES / LITTLE FEAT (セイリン・シューズ/リトル・フィート)
1. Easy To Slip 2. Cold, Cold, Cold 3. Trouble 4. Tripe Face Boogie 5. Willin’ 6. A Apolitical Blues 7. Sailin’ Shoes 8. Teenage Nervous Breakdown 9. Got No Shadow 10. Cat Fever 11. Texas Rose Cafe ※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。 |
※発売時期や国によって多少ジャケットが異なりますので、ご了承ください。
アルバム・ジャケットのデザインはこのアルバムから、ネオン・パークという人がデザインした奇妙な絵です。ブランコに乗っているケーキ姫が左足のハイヒールを蹴り出して、前に飛んで行っており、それを斜め後ろから王子様が眺めているという何とも不思議な絵。その絵がLITTLE FEATの独特の世界とかなり合っているかも知れません。
さてローウェエル・ジョージが参加していた頃のLITTLE FEATの作品でどれが一番好きかというと3枚目の「DIXIECHIKEN」だという人が一番多いかと思いますが、このセカンドアルバム「SAILIN’ SHOES(セイリン・シューズ)」を上げる人もかなりいると思います。
プロデューサーはこのアルバムから、DOOBIE BROTERSやNAN HALENも手がけたテッド・テンプルマンという人。1971年の作品。
この頃のLITTLE FEATやDOOBIE BROTHERSのサウンドはバーバンク・サウンドと呼ばれていました。1960年代は弱小レーベルだったワーナー・ブラザーズ・レコードが1970年代になって敏腕プロデューサーを使って才能あるアーチストを手がけていったのです。当時、ワーナーの本社があった場所の地名が「バーバンク」だったころからそのように呼ばれるようになったのです。
1曲目“Easy To Slip”・・・ローウェル・ジョージとフレッド・マーチン(のちにジャクソン・ブラウンのアルバム・プロデューサーも務めています)の共作。)カッティングのアコースティック・ギターで始まる曲。元気な曲でこれを聴くと元気がでます。ローウェル・ジョージのギターがC&Wっぽく(初期のEAGLESに通じる)、リッチー・ヘイワードのドラムスがかなり変拍子のリズムを叩いているので、合わせにくい感じがしますがそれが味があるのでしょう。
玄人受けするだけのことはあるオシャレな曲。
2曲目“Cold, Cold, Cold”・・・ローウェルの作品。思わず「渋い!」と叫びたくなるような粋な曲。この曲もドラムスがかなり複雑なリズムを刻んでいます。バスドラなどを聴いていると、ZEPPELINのドラマー、ジョン・ボーナムなどがかなり影響を受けたのではないかと思います。ニューオリンズのブルーズを思わせる重い感じのボトルネック・ギターがローウェルらしいです。バック・コーラスにボニー・レイットが参加しているようです。
寒いホテルで彼女にも逃げられて、何もかもが寒いと歌う歌。寒いのは実はヤク切れの禁断症状のことかも知れません。
3曲目“Trouble”・・・ローウェルの作品。アコースティックで渋く決めてます。C&W調ですが、適度に暗いところがまたいいと思います。のちにニコレット・ラーソンもカバーしています。
4曲目“Tripe Face Boogie”・・・ビル・ペインとリッチー・ヘイワードの共作。ビル・ペインのホンキートンク調のピアノで入るのがいいですね。ローウェルのハイトーンのボトルネック・ギターとハープがいい味出しています。
5曲目“Willin”・・・デビュー・アルバムに入れていた曲の再録です。ここではかなりC&Wっぽくなっていますが、ビル・ペインのピアノとゲストのスニーキー・ピートのペダル・スティールギターがいい味出して、コーラスもいと心地よし。
6曲目“A Apolitical Blues”・・・ローウェルの作品。彼が大きく影響を受けたハウリング・ウルフばりの渋いボーカルですが、独特の重いノリと歌詞が完全にローウェルだけの世界になっています。
7曲目“Sailin’ Shoes”・・・同じくローウェルの作品。前曲同様アコースティックな曲ですがブリティッシュ・ブルース・ロックにはないドライなサウンドで、しかもアンニュイな曲に仕上げてあるので、退屈しないです。
8曲目“Teenage Nervous Breakdown”・・・ローウェルの作品。凄いノリのロックンロールです。
“ロックンロールはからだによくねえ、おつむによくねえと言い張る奴がいる。心臓によくねえ、こころによくねえ、難聴になるし、目にもよくねえ。たまにゃー、狂気になって、アホになってしまう、たまにゃー、発狂してヨダレを垂らしてしまうとな。悪い業者は聴く奴を惑わせ、思うがままに騙すだけ。条件反射のようにロックンロールで飼い慣らされ、聴くのが当たりまえであるかのように、不快で騒々しいだけの会場を快楽にかえちまう。一度患うととんでもねえ。パブロフの犬のように聴くのが当たり前になって治りはしない。・・・十代で神経がまいってしまうんだぜ、十代で神経衰弱になるんだとよー”
こんなシュールな詩が書けるのは、THE DOORSのジム・モリソンかボブ・ディランかローウェル・ジョージくらいじゃないでしょうか?EAGLESのドン・ヘンリーもかなり皮肉屋ですが、あの人の詩にはまだ未来への期待とか救いがあるけど、ローウェルの場合は救いようのないどん底感があります。それが自分自身のあきらめなのか、超現実を嘲笑しているだけなのかは分からないですけど。
この曲は彼の曲の中でも特に秀逸な曲だと思います。大好きですね。
9曲目“Got No Shadow”・・・ビル・ペイン作。ローウェルがリード・ボーカル。ビルが作るとおとなしめ、よく言えば上品になりますね。それが、LITTLE FEATの色にだんだんなっていく訳ですが。ピアノはエレピっぽい音ですね。ローウェルが歌い、ギターを弾くとそれだけで存在感が十分なのはさすがですね。
10曲目“Cat Fever”・・・これもビルの作。ジャズっぽいサウンドがよいですが、ビルのリード・ボーカルはやはり線が細いですね。ローウェルのボトルネック・ギターがこの曲でも光っています。
11曲目“Texas Rose Cafe”・・・ローウェル作。途中で2回変拍子が入るというしゃれた曲。スローテンポから途中はいきなりプログレか?と思うような展開になってまたスローに戻るという不思議な曲。
全体を通して、オシャレなサウンドです。このアルバムもセールス的には全然成功せずに、このアルバムを最後にベースのロイ・エストランダが脱退することになるのです。
LITTLE FEATのサウンドにはまだ時代がついていけなかったのかな、と思います。音楽的・テクニック的にものすごくむずかしいことをさりげなくこなしているスゴ集団だったのですね、このバンドは。
※現在、このアルバムは国内盤、輸入盤ともに廃盤のようです。購入したいかたは手に入れやすい中古盤をオススメします。
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