THE LAST RECORD ALBUM / LTTLE FEAT (ラスト・レコード・アルバム / リトル・フィート)

2020年4月28日

 

THE LAST RECORD ALBUM / LITTLE FEAT

1. Romance Dance

2. All That You Dream

3. Long Distance Love

4. Day Or Night

5. One Love Stand

6. Down Below The Borderline

7. Somebody’s Leavin’

8. Mercenary Territory

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

※発売時期や国によって多少ジャケットが異なりますので、ご了承ください。ジャケット・デザインはネオン・パーク。西部のような荒廃した土地にサボテンが立ち並び、両サイドにはシネマがどどっと建ち、バックにオレンジ色の大きなゼリーが山のようにどっかりと。上に生クリーム、そしてゼリーには“HOLLYWOOD”の文字。手前に犬なのかウサギなのか分からない動物が1匹。なぜかシカのような角が生えている・・・相変わらず不可解なネオン・パークの絵ですが、それがLITTLE FEATワールドなのだと思えば楽しいものです。

 アルバム・プロデュースは今回もローウェル・ジョージ。「THE LAST RECORD ALBUM(ラスト・レコード・アルバム)」は1975年発表。ビル・ペインのシンセサイザーなどもかなりフィーチャーされて、前作までとはかなりイメージが変わっています。アルバム・タイトルからすればこれで解散かと思うのですが、“last”には「最近の」という意味もあり、メンバーはインタビューに「解散という意味ではなく、最新アルバムという意味だ」と笑っていたような・・・(ORLEANSのイアン・ホールなどがバック・コーラスで参加しています)。

 たしかに裏の歌詞が書かれたところの“High Roller”の歌詞がカッコで囲まれて「maybe next time」と書かれています。元々ローウェル・ジョージという人はしゃれっ気が強い人なので、アルバムタイトルも本気なのか冗談なのかはあとになってみないと分からないという感じだったと思います。毎回、メンバー間ではいろんな大小のもめ事があったようですから、アルバム発表後、解散でも納得されたかも知れません(結果的に解散していませんが、ローウェルの存在は小さくなって行きます)。ローウェルだけの好きな方法性ではメンバーが納得しない音楽性になって行ったのはたしかです(事実上、ローウェルがイニシアティブを取ったアルバムはここまでです)。

 裏ジャケットにはローウェルが“This is also the first record that I identify myself”(このアルバムは俺自身初めて自分らしさを表現できたアルバムだ)と言っています。ハリウッドをイメージして作ったというこのアルバムはハリウッドというアメリカの映画界の光と影を投影しているとも言え、ローウェル自身のバンド・リーダーとしての悲哀みたいなものも盛り込めたアルバムだということができるでしょう。

 しかし、その存在感はさすがです。表面上はローウェルの存在は隠れていても、いったんボトルネック・ギターを弾けばすぐに“identify(認識)”できるし、ローウェルがリード・ボーカルを取れば一聴でそれと分かってしまうのです。

 1曲目“Romance Dance”・・・ポール・バレル、ビル・ペイン、ケニー・グラッドニーの共作。リード・ボーカルはポール・バレルか?かなり南部っぽいサウンド。当時の言い方だとレイドバックというのでしょうか?ハードロックとは両極にあるリラックスした音。

 2曲目“All That You Dream”・・・ポールとローウェルの共作。リード・ボーカルはローウェル。のちにリンダ・ロンシュタットもカバーして有名になっています。間奏のキーボードはかなりフュージョンっぽいので、賛否はあるとことでしょう。しかし、ローウェルのボーカルとギターはさすがです。エリック・クラプトンが歌ってもおかしくない曲ですね。

 3曲目“Long Distance Love”・・・ローウェルの作。リトル・フィートの曲では一番好きという人も多い、人気の曲です。ローウェルにしてはストレートな歌詞。タイトルは直訳すれば“遠距離恋愛”ですが、実際の距離というより心理的なもの、つまり「届かぬ愛」を歌ったものです。ローウェルがリンダ・ロンシュタットにインスパイアされて書いたとも言われています。むなしい歌ですが、絶望感はありません。

 BSの「ロックの要」で放送されたというこちらのスタジオライブ画像は貴重です⇒long distance love

 4曲目“Day Or Night”・・・クレジットではビル・ペインとフランシス・ペイン・ボルトンというかたの共作となっています。フランシス・ペイン・ボルトンはアメリカで看護士学校の創設に貢献された女性のようです。ひょっとするとビル・ペインのおばあさんなのかも知れませんが不詳です。リード・ボーカルはビル。南部の香りのする曲ですが、LITTLE FEATの泥っぽいサウンドにはやはりシンセサイザーの電子音は不釣り合いのように私は思います。

 5曲目“One Love Stand”・・・ポール・バレル、ビル・ペイン、ケニー・グラッドニーの共作。リード・ボーカルはローウェル。この曲はカーリー・サイモンもカバーしています。レイドバックしたスワンプ・ロックの香りがプンプン。ポールとローウェルのギターの掛け合いもよいです。

 6曲目“Down Below The Borderline”・・・ローウェル作。リード・ボーカルもローウェル。思わず渋いと叫びたくなる、けだるい南部っぽいサウンド。ビルのエレクトリック・ピアノもよいです。

 7曲目“Somebody’s Leavin’”・・・ビル・ペイン作。ボーカルもビル。スローで泥臭さがある佳作。

 8曲目“Mercenary Territory”・・・ローウェルとドラムスのリッチー・ヘイワードの作。リード・ボーカルはローウェル。ミドルテンポのシャッフル・リズムの渋い曲。

 LITTLE FEATのスタジオ・アルバムの曲はどれも短い曲が多く、もう少し聴きたいところで終わる曲が多い。そのため、アルバム1枚A・B面でトータル30分台、しかも30分台前半ってことが多い。レコード時代の弊害かも知れませんが・・・。

 LITTLE FEATの場合は出すアルバムごとに独特の色がありますが、このアルバムはまとまりというか調和に満ちたアルバムと言えるでしょう。ローウェル・サウンドが大好きという人には物足りないですが、バンドの音を楽しむのであればいいアルバムです。