STARLESS & BIBLE BLACK / KING CRIMSON

1. The Great Deceiver

2. Lament

3. We’ll Let You Know

4. The Night Watch

5. Trio

6. The Mincer

7. Starless And Bible Black

8. Fracture

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

 1974年5月発表のキング・クリムゾン名義で7枚目「STARLESS & BIBLE BLACK(暗黒の世界)」。原題は「星も出ていない、真っ黒な(装丁の)聖書」とでも訳すのでしょう。ニュアンスは邦題的な理解でよいのではと思います。前作はレコード時代、シングル・ジャケットでしたが、今回のアルバムはダブル・ジャケットに戻っていました。しかし、ご覧のようにデザインは非常に地味(白地にグループ名とアルバム・タイトルのみ。裏は曲名クレジットのみ)。

 メンバーは、ジェイミー・ミューアが仏教の僧侶になるため脱退し、

ロバート・フリップ - ギター, メロトロン, エレクトリック・ピアノ
ジョン・ウェットン - ボーカル, ベース
ビル・ブラッフォード - ドラムス,パーカッション
デヴィッド・クロス - バイオリン, ビオラ、メロトロンKING CRIMSON

 となっています。このアルバムは変則的で、最初の2曲はスタジオ録音であとの6曲はライブ収録となっている点。ライブ音源のほとんどは1973年11月23日のアムステルダム公演となっており、のちに「THENIGHT WACTH( Live at the Amsterdam Concertgebouw November 23rd 1973)」という2枚組のCDとして発売されています。

 作詩も前作同様、リチャード・パーマー・ジェイムズが担当しています。

 1曲目“The Great Deceiver”・・・邦題は“偉大なる詐欺師”。詩が非常に難解です。途中何度も「シガレット、アイスクリーム、マリアの小像」というフレーズが出て来て、私はそのフレーズだけでこの曲は嫌いになりました(その部分のメロディも好きじゃないです)。お蔭で、クリムゾンのアルバムはほぼ買いそろえていましたが、このアルバムを手に入れたのはかなり後です(1曲目のためかなりインパクトがあったので、このアルバムのイメージとしてすり込みされたのでしょう)。

 かなりハードな始まりですが、歌が始まるとかなりヘビーになり、間奏はまたハード。ロバート・フリップのギターはかなりアバンギャルドです。例の苦手なフレーズさえなければなかなかできのよい曲だとKing Crimson live思います。

 2曲目“Lament”・・・ピアノからしっとりと始まる曲は、ジョン・ウェットンのボーカルもしっとり、しかし間奏になってアップテンポでハードになります。最後があっけないのは、当時の1枚のレコードが45分収録が限界という宿命といったところでしょうか。

 3曲目“We’ll Let You Know”・・・ここから基本ライブです。インストゥルメンタルの曲で、これからいい感じで盛り上がるかなと思ったら、いきなりフェイドアウトという残念な曲。

 4曲目“The Night Watch”・・・この曲はイントロのギターが激しくかき鳴らされるまでがライブ録音、その後、一瞬音が途切れて、スタジオ収録のテイクが入ります。動のイントロ、静の本編としたかったからでしょうか?

 リチャード・パーマー・ジェイムズは、オランダの17世紀の画家、レンブラントの「夜警(The Night Watch)」という絵画(画像の絵参照)夜警にインスパイアされて、この詩を書いたんだそうです。夜警というタイトルはあとで付いた俗称のようで、この絵は本当は昼間を描いているそうですが、描かれて300年が経過する間にすすけてしまい、まるで夜の情景を描いたように見えるだけだとか。ですから、この歌には“輝け輝け、素晴らしき作品が放つ光よ輝け。全盛期に描かれた 城門の前に立つ警備隊よ。今は完全にすすけてしまったその金色の光。三百年という時が過ぎてしまったんだ。”と歌われているのです。

 5曲目“Trio”・・・ビル・ブラッフォード不在で3人編成の時に録音したので“トリオ”というタイトルになっています。穏やかなインストゥルメンタルの曲。夜明けの誰もいない海を想像していただけるといいかも知れません。リラックスできる、いい曲です。

 6曲目“The Mincer”うねるようなロバート・フリップのギターとおかずの多いビル・ブラフォードのドラムス、最後はボーカルが入ったかと思うとあっけなく終わってしまいます。

 7曲目“Starless And Bible Black”・・・インプロビゼーション。「EARTHBOUND」のライブでもそのライブの模様を察することができましたが、ロバート・フリップは前の曲、この曲と次の曲のようなライブをやりたかったんだな?というのが分かる気がします。

 8曲目“Fracture”・・・ラストを飾るにふさわしい壮大なイメージの曲です。大きな恐竜が歩き出しているようなのそのそしたスローテンポで始まり、後半のたたみかけるようなアグレッシブな盛り上がりは恐竜同士が争うかのよう。“Fracture”とは何かが壊れるとか折れるとかいう意味なので、ダムでも決壊してしまったイメージかも知れません。

 1曲目はいまでも好きになれませんが、トータルするとかなりできのいいアルバムになっています。発売順でいうと、この前のアルバム「LARKS’ TONGUES IN ASPIC」と、次のアルバム「RED」がいずれも名作とされているので、間に発売されたこのアルバムはジャケットのイメージもあってか、地味なアルバム扱いされることも少なくないですが、よくできたアルバムだと思います。「EARTHBOUND」は日本盤がなかなか発売されなかったので、始めて日本盤でお目見えしたKING CRIMSONのライブ収録曲が聴けるアルバムになったという意味でも大きな意味があると言えるでしょう。

 ライブではロバート・フリップもデヴィッド・クロスもメロトロンを弾いていたので、ロバートのギターをフューチャーしてメロトロンがバック、デヴィッドのフルートをフィーチャーしてメロトロンがバック、はたまた時にはダブル・メロトロンのアンサンブルなどもあって、様々な音を贅沢に聞けた時代でもあった訳です。

 しかしデヴィッド・クロスはだんだんハードなサウンドになっていくグループの音に耐えきれず、このアルバムを最後にグループから離脱してしまいます。