HOTEL CALFORNIA/EAGLES(ホテル・カルフォルニア/イーグルス)

2020年12月20日

 

HOTEL CALIFORNIA /EAGLES

1. Hotel California

2. New Kid In Town

3. Life In The Fast Lane

4. Wasted Time

5. Wasted Time (Reprise)

6. Victim Of Love

7. Pretty Maids All In A Row

8. Try And Love Again

9. The Last Resort

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

※発売時期や国によって多少ジャケットが異なりますので、ご了承ください。ジャケットに写っているホテルはロサンゼルスのビバリーヒルズ・ホテルです。「HOTEL CALIFORNIA(ホテル・カリフォルニア)」が売れた頃にはホテル・カリフォルニアが本当に存在すると思っていた人が少なくないようですが、もちろん実在していません。ホテルの外形の撮影はもちろんホテル側の許可を得てされました。場所柄からしてもかなりの高級ホテルですが、宣伝効果も大きかったようです。
 “Hotel California”の歌詞に出てくるような廃退したホテルではなく、とても明るく高級なリゾート・ホテルのようです。

 バーニー・レドンが脱退して、後継のギタリストが決まるのに難航したことは「ONE OF THESE NIGHTS(呪われた夜)」のところで書きましたが、その後継選びが難航している間に、EAGLESは時間つなぎとして、ベストアルバムを発売していました。

   

 その後、何回かベストアルバムが出ているので、それと区別するために、形式上「EAGLES BEST 1971-1975」と言われています。このアルバムは大ヒットしてアメリカ国内だけでも、2,900万枚も売れており、新設されたプラチナ・デスク認定第1号となっています。

 後継のメンバー選びは難航しましたが、結局マネージメントとプロデューサー(ビル・シムジク)を同じくするジョー・ウォルッシュが有力候補となりました。自分で何からなにまでイニシアティブを取らないといけないやりかたに嫌気がさしていたジョー・ウォルッシュのほうからEAGLESへの加入を希望して来たそうです。
 しかし、彼の加入でよりハードなサウンドになることが予想されたため、ランディ・マイズナーは反対したようですが、結局はジョーに決まったワケです。しかし、ドン・フェルダーが正式に加入した時点でEAGLESのサウンドはC&W色も薄れ、すでにかなりハードなサウンドになって来ていたので、この流れはもしジョー・ウォルッシュが参加してなかったとしても止められなかったのではないかと思います。

 さて、「HOTEL CALIFORNIA(ホテル・カリフォルニア)」のレコ-ディングは初来日公演後の1976年3月~10月にマイオミとロサンジェルスの2カ所のスタジオで行われています。アルバム「ONE OF THESE NIGHTS(呪われた夜)」とそれに次ぐ「ベストアルバム」の大ヒットがプレッシャーとなって、メンバーはかなりナーバスになっていたようです。したがってJ.D.サウザーにも曲作りに協力するよう依頼してメンバーは万全の体制でレコ-ディングに臨んだのです。

 1曲目“Hotel California”・・・このアルバムが発売されてからは知らない人はいないだろうと言われるくらい大ヒットした曲ですね。もちろん全米では1位。日本でもFM局だけでなく、AM局でもかなりかかっていたようで、演歌しか知らないようなバーのお姉ちゃんすらこのレコードは買ったというくらい日本でもヒットしたようです。
 ドン・フェルダー、ドン・ヘンリー、グレン・フライの共作ということになっていますが、曲はドン・フェルダーが1週間くらいで書き上げ、すごく興奮して録音した音をメンバーに聞かせたと言います。ドン・ヘンリーもその曲の素晴らしさに感動したようですが、どんな歌詞にするかかなりの試行錯誤したと言います。
 この歌の歌詞は当時の病んだアメリカを象徴していたと言われています。誰もがアメリカンドリームを抱いて集まるが、結局は失望だけが残るのです。しかし、それと同時に音楽をやめようとしても辞められないところまで来てしまった自分たちをも皮肉っているのです。

eagles battle

 “夜警がこう言った。『落ち着きなさい。我々はここに住み着く運命なのです。いつでもチェックアウトはできますが、誰もここを立ち去ることは不可能なのです』”

 またこういう歌詞も出て来ます。“『ワインを飲みたいんだが』とキャプテン(給仕長)に告げると『1969年からアルコール(スピリッツ)は一切置いておりません』と彼が答えた”
 1968年にキング牧師やケネディ大統領が暗殺されて、1969年にニクソン大統領が就任しました。ドン・ヘンリーはこのニクソンが大統領に就任したことをアメリカがスピリッツを失ったと揶揄しているのでしょう(ニクソン大統領に関しては評価が分かれますが)。

 曲に関してはいうことがないくらいの素晴らしい構成ですよね。イントロの12弦ギター、ドン・ヘンリーのクールなボーカル、ハイトーンなコーラス、ドン・フェルダーとジョー・ウォルッシュの素敵すぎるギターバトル・・・。

 2曲目“New Kid In Town”・・・ドン・ヘンリー、グレン・フライ、J.D.サウザーの共作。街にやってきた新参者が最初は珍しがられてちやほやされるけど、やがて飽きられて、今度は他の新参者に興味を示し、昔の人には見向きもしなくなるという移ろいやすい人の気持ちを歌った歌。ウエストコーストサウンドがかつてはもてはやされたのに、やがて飽きられてしまったリスナーを皮肉っている歌と言われています(グレンはのちに、ロサンゼルスにやって来て人気の出て来た、白人なのにR&Bばかり歌うホールズ&オーツのことを見て作った歌だと語っています)。
 グレン・フライがリード・ボーカル。C&W調の心地よいサウンドのため、ついつい歌詞の悲しさを忘れてしまいがちですがなんともわびしい歌です。この曲もシングル・カットされて全米1位に輝きました。

 3曲目“Life In The Fast Lane”・・・ジョー・ウォルッシュ、ドン・ヘンリー、グレン・フライの共作。ドン・ヘンリーのリード・ボーカル。現代人のめまぐるしい都会の暮らしを“高速車線”にたとえ、目まぐるしく格好いいけど、むなしい人生だと歌ったもの。ジョー・ウォルッシュが加わってまたEAGLESサウンドの幅が広がったとも言えるファンキーなサウンド。
 リード・ギターもジョー独特の味があります。
 この曲も音楽業界の中であえぐ自分たちを投影しているとも言えるのでしょう。

 4曲目“Wasted Time”・・・ドン・ヘンリー、グレン・フライの共作。ドン・ヘンリーのリード・ボーカル。失恋した時の虚無感を慰めている歌。失恋すると、今までのあのバラ色と考えられたトキも全く無駄な時間だったと思える場合もあるのでしょうが、その時間も決して無駄な時間ではなかったと言っているのです。

 “新しい恋が表れては去って行き年月は矢のように過ぎていく。キミが別れる前に言った言葉、今でも時々思い出すよ。『愛を続けさせるためには離ればなれになることも必要なんだよ』って。だから、キミはキミの望むむものを探し続けて行けばいいし、僕も自分の道を歩き続けて行く。そうすればいつかきっと気づく時が来るだろう。僕たちもそんなに無駄な時を過ごしたワケではないということを。”eagles III

 ピアノはグレン・フライ、リード・ギターはドン・フェルダー。そして途中から入るストリングス。EAGLES自身も無駄な時間を費やして来たと思いたくないのでしょう。彼らは自分たちが無駄な時間を費やして来なかったという証しをみずから立てるために、名曲を作り続けて来たのかも知れません。

 5曲目“Wasted Time (Reprise) ”・・・ストリングスだけのインストゥルメンタルです。こういう曲を挟むことで、アルバムの流れを作り、まとまった映画のようなイメージにしたかったのでしょうか?

 6曲目“Victim Of Love”・・・J.D.サウザー、ドン・ヘンリー、グレン・フライの共作。ドン・ヘンリーがリード・ボーカル。ジョーのスライド・ギターとドン・フェルダーのリード・ギターがうまく絡んでいます。

 偽りの恋に未だに執着している女性を非難しつつも、“結局、俺たちは似たもの同士”と歌っています。ホントの愛ではないと知りつつもその愛に固執している女性と、音楽の純粋なスピリッツを見失いながらも、音楽をやりつづけている自分たちをダブらせているのでしょうか?

 7曲目“Pretty Maids All In A Row”・・・ジョー・ウォルッシュとジョー・ヴィターレ(Rock Mountain Wayなどもジョーと一緒に作ってます)の共作。リード・ボーカルもジョー。

  “叶うはずもない富を手に入れることを夢見て暮らす愚か者たち。誰か キミにバラの花1本でも贈るといいのに・・・”というやさしいバラードです。

 8曲目“Try And Love Again”・・・ランディ・マイズナー作、そしてリード・ボーカル。何度も恋に破れた男がもう一度だけ愛を信じてみようと決心する歌。ほかならぬランディが歌うからこそ説得力がある歌ですね。バックコーラスもやさしく、ドン・フェルダーとジョーの2本もやさしくサポートしています。

 9曲目“The Last Resort”・・・ドン・ヘンリーとグレン・フライの共作。後半はおとなしめの曲ばかりで気持ちよく終わるのかと思いきや、最後の最後に辛辣な歌詞です。

 曲調こそペダルスチール・ギターが入ったりしておとなしいですが、歌詞は本当にすごいです。アルバムが発表されたのはアメリカが建国200年を迎えた記念すべき年だったのにEAGLESは手厳しくアメリカを皮肉っています。
 “・・・その土地に富ある人々がやって来て、我が物顔に土地を略奪して行った。でも誰もそれを止めさせることはできない。彼らは醜悪な家を次々と建て、イエスの民はそれを買い受けた。やがて彼らはそこをパラダイスと呼び理想の国と考えた。くすんだ太陽が海に沈んでいくのを眺めながら・・・”
 “日曜日の朝にキミ見るだろう。あそこがいかに素晴らしいかを。立ち上がって声高らかに歌う彼らの姿を・・・。彼らはそこをパラダイスと呼ぶ。俺にはなぜだか分からない。もし、あそこが真の楽園だというのなら、そんなものはキスしてオサラバさ~・・・。”

 このアルバムを作られた時代が米ソの冷戦時代で、多くの人々が核兵器の恐怖におびえていた時代であったことを考えると、EAGLESはいや少なくてもドン・ヘンリーとグレン・フライはアメリカ建国200年と言って浮かれている場合ではないと、このアルバムを通して言いたかったんだと思います。

 このアルバムは1,300万枚くらい売れたそうですが、アメリカ国民はこのアルバムで彼らが言いたかった真意をどれだけ真摯に受け止めたのでしょうか?ただただ曲の素晴らしさだけを絶賛し、その詩の中に隠されているアイロニーを真面目に考えてみた人が一体どれだけいるのでしょうか?

 この「HOTEL CALIFORNIA」の大成功によって、彼らは名声を上げました。しかし、その成功が前作以上のプレッシャーを彼らにかけていくことになるのですから皮肉なものですね。

 ここでも“Hotel Calfonia”のライブ動画をアップしておきます。昔MTVでもよく流れていた映像なので、ご覧になったこともあるでしょうか?

アルバムではフェードアウトで終わるのですが、ライブではそうもいかないのでしょう。賛否両論があると思いますが、個人的にはエンディングにはもう少し工夫があったほうがいいのでは?と聴くたびに思います。


※非常に人気があるアルバムだけに、いろんなパターンのアルバムが出ています。下の一番左が一番オーソドックスな輸入盤(リミックス)ですが、左から二番目は国内盤のハイブリッドSACD盤で、SACDは2チャンネル・ステレオと5.1チャンネルの2パターン入っています。5.1chのリミックスは少々違和感がないではないですが、ドラムの音もクリアに聴こえ、分離度は高いと思います(ただし、SACD対応のプレヤーを持ってないと、SACD部分は聴けないので、ご注意ください)。

※※そして、左から3番目は40周年を記念して発売されたもので、1枚目のCDはリミックスされたスタジオ・アルバムが入り、2枚目は1976年10月にロサンゼルス・フォーラムで行われ、収録された3夜のライヴから、10曲のライヴが収録されています。アルバム発売後1カ月目で行われ、初めて大勢のオーディエンス前で感動もひとしおです。

 曲名は以下の通り。

1. Take It Easy
2. Take It To The Limit
3. New Kid In Town
4. James Dean
5. Good Day In Hell
6. Witchy Woman
7. Funk #49
8. One Of These Nights
9. Hotel California
10. Already Gone

 “Hotel California”はオープニングに演奏されることが多かったのですが、ここではかなりあとで演奏されているのが、意外です>