ONE OF THESE NIGHTS/EAGLES(呪われた夜/イーグルス)

2020年12月20日

 

ONE OF THESE NIGHTS /EAGLES

1. One Of These Nights

2. Too Many Hands

3. Hollywood Waltz

4. Journey Of the Sorcerer

5. Lyin’ Eyes

6. Take It To the Limit

7. Visions

8. After the Thrill Is Gone

9. I Wish You Peace

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

※発売時期や国によって多少ジャケットが異なりますので、ご了承ください。

 「ONE OF THESE NIGHTS(呪われた夜)」は1975年6月10日全米で発売。ビルボード最高順位1位。

 前作「ON THE BORDER(オン・ザ・ボーダー)」で、EAGLESは転換点を迎えたが、このアルバムではさらにハードで、ファンキーな音作りをするようになっています。このことは、前作はゲスト・プレヤーとして参加し、のちに正式なメンバーとなったギタリストのドン・フェルダーと、プロデューサーのビル・シムジクの力が大きいと言えるでしょう。

 彼らはこの「ONE OF THESE NIGHTS(呪われた夜)」を作るのに、半年間近くを費やしました。決して順調にレコーディングがいったワケではありません。グループ結成時には音楽の決定は公平で民主的であったのですが、前作あたりから実質的に主導権を握っはじめたドン・ヘンリーとグレン・フライが、アルバムの選曲等に関してもイニシアティブを握り、音楽的にもカントリー色を次第に薄めていくことにバーニー・レドンは不満を抱いていました。またバーニーにとってはドン・フェルダーの加入も快く思っていませんでした。だんだん自分の居場所がなくなっていく気がしていたのです。
 このアルバムでは後述するようにバーニーは自作の曲さえ歌うことを認められなかったものもあり、次第にドラッグと女におぼれて生活が荒廃していく他のメンバーに嫌気が差し、レコーディング中に3日ほど頓挫したこともあるのです。

 しかし、なんとかアルバム発売までこぎ着けたのです。

 1曲目“One Of These Nights”・・・そのまま日本語に訳せば“ここ数日の、とある夜に”くらいになるのでしょうが、日本のレコード会社のスタッフは“呪われた夜”という邦題を付けてしまいました。たしかに、おどろおどろしいようなベースから始まり、それにかぶさるグレンの不気味なサウンドのギター、なにか不吉なことでも起きそうなR&Bっぽいサウンド。これがあの“Take It Easy”を歌った陽気なウエストコーストのバンドかと思えるくらい、くらく寂しい曲。
 “僕は悪魔のような本性と純白で身を包んだようなやさしい天使を探し求めて来た。つまりは、僕にもっともふさわしいのは悪魔と天使の両面性を持った女。きっとそんな女は近くにいるはずさ。でも、一体いつになったら見つけられるのだろうか”
 この曲はドン・ヘンリーとグレン・フライの共作です。探しているものが見つからないという心境はまさに自分たちを投影させているのでしょう。自分たちが求める本当にやりたい音楽=天使と、名声・お金=悪魔・・・この二つが同時に手に入る時など永遠に来ないかも知れないのに。
 ドン・フェルダーのギター・ソロも見事に決まり、全米でシングル1位を獲得。この一種独特のベース・ラインやギターはドン・フェルダーのアレンジの功績。

 2曲目“Too Many Hands”・・・ランディ・マイズナーとドン・フェルダーの共作。リード・ボーカルはランディ。イギリス民謡を思われるようなオープンチューニングのアコースティック・ギター、後半はインドの打楽器タブラまで出て来る。LED
ZEPPELINの4枚目のアルバムに入っている“The Battle Of Evermore”を彷彿させるような曲です。後半のフェルダーとグレンのギター・バトルはなかなか格好いい。
 “あまりにも多くの汚れた手に触られた彼女が不幸な女だと知る人はあまりにも少ない。それは彼女が顔を背けて泣いて声を立てないからさ”
 魔性の女を歌った妖しい歌ですが、それは一流ミュージシャンにお世辞をばらまいて集まる業界人を皮肉ったものだと言われています。

 3曲目“Hollywood Waltz”・・・バーニー・レドンと弟のトム・レドンがメインとなって作った歌(クレジット上はバーニー、トム、グレン、ドン・ヘンリーとなっています)なのに、リード・ボーカルはドン・ヘンリーになった因縁の曲。
 これはハリウッドで有名な映画スターの夢をつかもうとしてる、女優たちを皮肉った歌のようです。バーニーの奏でるスティールギターとマンドリンは牧歌的なのに、歌詞は辛辣です。

 4曲目“Journey Of the Sorcerer”・・・バーニーが書いたインストゥルメンタルの曲。バーニーのバンジョーとゲストプレヤーのデヴィッド・ブロムバーグのフィドルが本物のストリングスをバックに美しく絡みます。

 5曲目“Lyin’ Eyes”・・・ドン・ヘンリー、グレン・フライ・コンビの作品。グレンがリード・ボーカル。シングルカットされて全米最高位2位。グラミー賞最優秀楽曲賞受賞。この二人のコンビにしては珍しくC&Wっぽい曲です。金持ちの男と財産目当てで結婚した女性を皮肉っぽく歌う歌ですが、その女性とはカネ目当てで音楽をやっている自分たちの姿をダブらせているのです。

 6曲目“Take It To the Limit”・・・ランディ・マイズナーの作。リード・ボーカルもランディ。シングルカットされ全米最高順位4位。自分の限界に挑んで頑張りたい、という真面目なランディが書きそうな歌です。ハーモニーが素晴らしい。この曲もストリングスをバックに壮大な曲になっています。

 7曲目“Visions”・・・ヘンリー・フェルダーの黄金コンビの作品。フェルダーのリード・ボーカルがやっと出て来ました。
 “踊ろう、エンジェル。ブルースを完全に忘れられるまで踊りつづけよう(それだけが今のキミを救えるものさ)。もう1回挑戦しよう。失うものは何もないのだから(とにかくあの男はキミを愛しちゃいかなった)。”
 ドン・フェルダーのギターがさえる曲ですが、ボーカルが少し弱い感じですね。

 8曲目“After the Thrill Is Gone”・・・ブルースの巨人B.B.キングの名曲“After the Thrill Is Gone”をしっかりと意識した曲。これもヘンリー・フェルダーの黄金コンビの作品。
 “いつもと同じ靴を履いて、同じダンスを踊っている。ステップがついぎこちなくなってしまう。勝とうとも思わないキミだけど、負けたくもない気持ちだろうね。愛が冷めてしまったあとでは・・・”
 冷めた男と女の冷たい関係を歌ったカントリー・ブルースっぽい曲調の歌。食べるために、稼ぐために音楽をやっている自分たちの姿を重ねていることは言うまでもありません。

 9曲目“I Wish You Peace”・・・このアルバムを録音する際、カバー曲は入れないようにしようと約束したと言います。しかし、結果的にこの当時バーニーの彼女だったパティ・デイビス(レイガン大統領の娘)とバニーの共作を収録しています。それがバーニーへの最後の温情だったのでしょうか?
 バーニーらしいカントリー調のバラードです。
 “冷たい風が吹き荒れる時、火のそばで温かくいられる安らぎをキミに祈る。寂しい時には安らぎと心が痛む時にはキミが優しく抱いてくれる人がいることを僕は祈る”

 他のグループを見ていても、素晴らしいアルバムを作ったあとというのは、メンバーの誰かが脱退するというケースは少なくないようです。それだけ煮詰まっていたとも言えるし、次へのステップとしてやむを得ないというべきなのか・・・。

 このアルバムを発表後、当分はバーニー・レドンも我慢をして契約上のツアーをこなしていましたが、1975年12月、ついにバーニーは脱退を宣言して去っていったのでした。バーニーは脱退後も、C&Wっぽい音を出して活躍し、現在はプロデューサーをやっているようです。

 後継は難航しましたが、元JAMES GANGのギタリストをしていたジョー・ウォルッシュの加入が決まりました。ハード・ロック畑の人という印象が強かったので、私はかなり意外な感じでした。

 バーニーが脱退宣言をしてすぐの翌1976年2月にEAGLESは初来日公演が実現します。ついでにこの内容も付記しておきます。

EAGLES初来日公演日程

2月2日 大阪フェスティバルホール
2月3日 大阪フェスティバルホール
2月4日 福岡九電記念体育館
2月5日 神戸国際会館
2月7日 日本武道館
2月9日 名古屋市公会堂

演奏曲目

1. Take It Easy
2. Outlaw Man
3. Doolin-dalton/Desperadoeagles live
4. Turn To Stone
5. Lyin’ Eyes
6. You Never Cry Like A Lover
7. Take It To The Limit
8. Desperado
9. Midnight Flyer
10.Already Gone
11.One Of These Nights
12.Too Many Hands
13.Good Day In Hell
14.Witchy Woman
15.Rocky Mountain Way
Encore
James Dean
The Best Of My Love
Funk#49
Oh Carol
Tequila Sunrise

 “We are EAGLES from Los Angeles”コンサートはグレン・フライのそんな紹介から始まります。バックに「ONE OF THESE NIGHTS(呪われた夜)」のジャケットと同じ絵が飾ってあるシンプルなもの。まだジョー・ウォルッシュが加入して間もない時期の来日公演だったこともあり、彼の参加でEAGLESのサウンドがどのように変わっていくのかに一番の関心が寄せられたようですが、EAGLESの既存曲に関しては無難にこなしていたようです。ただし、随所のドン・フェルダーとのギターの掛け合いなどに関しては、1976年末に登場する次作を予感させるものが今からしてみればあった感じです。

 驚いたのはジョー・ウォルッシュの曲がかなり入っていたこと。ソロになったからの“Turn To Stone”や“Rocky Mountain Way”はかなりの大作(演奏時間が長い)ですし、“Funk#49”はJAMES GANG時代の曲。いずれもかなりハードな曲でした。
 ニール・セダカの“Oh Carol”などをプレイしていたのは単なるお遊びか?

 いずれにしても、この初来日公演でEAGELSが単なるスタジオ・アーティストではなくて、テクニックも十分のライブ・バンドであることが日本のファンに実証されたワケです。

 最後に1977年にされた“One Of These Nights”のライブを上げておきます。個人的には“Hotel Calfornia”も好きですが、独特の世界観のこの曲を聴くと背中がむずむずして、感動を抑えきれません。イントロのベースが何度聴いても妖艶でいいですね!ランディのファルセット・ヴォイスも感動的!!ドラムを叩きながら、歌うこの頃のドン・ヘンリーは本当にクルーでカッコいいし!!!