DESPERADO / EAGLES (ならず者/イーグルス)

2020年4月29日

 

DESPERADO /EAGLES

1. Doolin-dalton

2. Twenty-one

3. Out Of Control

4. Tequila Sunrise

5. Desperado

6. Certain Kind Of Fool

7. Doolin-dalton (Instr.)

8. Outlaw Man

9. Saturday Night

10. Bitter Creek

11. Doolin-dalton/Desperado (Reprise)

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

※発売時期や国によって多少ジャケットが異なりますので、ご了承ください。ジャケットにはDESPERADO(ならず者)に扮したメンバー4人が写っています。

 「DESPERADO(ならず者)」は1973年4月全米で発売。ビルボード最高順位41位。

 西部開拓時代のならず者をテーマにしたトータルアルバムの様相を呈しています。そこにメンバーたちを投影させたコンセプトになっています。このコンセプトはグレン・フライの友達だったジャクソン・ブラウンやJ.D.サウザー(グレンとジャクソン・ブラウン、JDサウザーは一時期、アパートの一室を借りて3人で共同生活をしていた時期があります。またグレンとJDはイーグルス結成前に一緒に“ロング・ブランチ・ペニー・ウィッスル”というデュオを組んでアルバムも出していたようです。実はグレンがロサンゼルスに出て来てすぐ、当時のガールフレンドと一緒に歩いていたら、ガールフレンドのお姉さんと歩いているJDに偶然出会ったのが、二人の出会いだったそうです。それが縁で意気投合し、お互いガールフレンドと分かれたあとも、ずっと交遊が続いているようです)の3人で話が始まっているので、裏ジャケットには彼らの2人も写真に写っています。

イーグルス「ならず者」裏ジャケット

 各々が自分にお気に入りのファッションを買って、実際に西部劇のセットを作ってピストルで空砲を撃ったようです。硝煙がすごくて当日は誰か近所の人が火事だと思って通報し、消防車が出動する騒ぎになったほどだそうです。

 上の画像が裏ジャケットの写真ですが、立っているのがスタッフたちで、ならずものの6人として横たわっているのが、向かって右からJ.D.サウザー、ドン・ヘンリー、ランディ・マイズナー、グレン・フライ、バニー・レドン、ジャクソン・ブラウンの順。Jブラウンの顔はバニーの腕で半分ほど隠れてほとんど識別できませんね(笑)。

 1曲目“Doolin-dalton”・・・ドゥーリン=ダルトン・ギャング団のボス格だったウィリアム・“ビル”・ドゥーリンとウィリアム・マリオン・“ビル”・ダルトン(ドルトン)の2人のことを歌った歌。この二人は映画『明日に向かって撃て!』(ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード主演)で描かれて有名になりました。
 グレン・フライ、J.ブラウン、J.D.サウザー、ドン・ヘンリーの共作。ハーモニカとアコースティック・ギターで始まるこの曲は西部の香りがプンプン。バーニー・レドンのエレキ・ギターがいいアクセトになっています。

 リード・ボーカルはドン・ヘンリーとグレン・フライが交互に歌っていますが、ドンのほうがやはりちょっと味があるでしょうか?

 2曲目“Twenty-one”・・・21歳で亡くなった西部開拓期のアウトロー、ビリー・ザ・キッドをモチーフにした歌。バーニーの作品でリード・ボーカルもバーニーです。バンジョーを演奏でモロ、ブルーグラス・サウンド。途中のスティール・ギターもいい味出してます。「21」はビリーが亡くなった歳というだけでなく、生涯で殺した人の数でもあるようです。eagles desperado1

 怖い物知らずという意味では、ビリー・ザ・キッドもドゥーリン=ダルトンの2人の“ビリー”も同じですね。

 3曲目“Out Of Control”・・・イントロのギターからしてかなりハードなロックンロール。グレン、ドン、そしてドンの友人のトミー・ニクソンという人による共作。
 グレンのワイルドなボーカルが炸裂し、強盗に成功したドゥーリン=ダルトン一味のらんちき騒ぎを歌っています。

 4曲目“Tequila Sunrise”・・・3曲目とは全く違ったしっとりとした曲調。
 “テキーラ・サンライズのような夜明けがまた一日、ゆっくりと空を染めて行き「さよなら」がこぼれ落ちた” 強盗に明け暮れ、成功をつづけているのに、ふと胸に迫る空しさ、そんな心境を察してグレンが切々と歌うバラード。
 テキーラ・サンライズとはメキシコがオリジナルのサボテンで作ったお酒テキーラをベースにオレンジ・ジュースとグレナデン・シロップを加えてアレンジされた赤いカクテルの名前です。ROLLLING STONESのミック・ジャガーが1972年にメキシコ公演をした際、このカクテルを飲んでえらくお気に入りになり、絶賛したことから広く世界中に知られることになったようですが、EAGLESがこの曲を作ってシングル・カットされたことから一層知られるようになったカクテルです。
 ピアノはグレンが弾いています。
 発売当初は、全米最高位64位とそれほどヒットはしていませんが、EAGLESが有名になればなるほど再評価されることになった曲です。

 5曲目“Desperado”・・・シングルカットはされていませんが、リンダ・ロンシュタット、カーペンターズ等eagles desperado2々多くの人たちにカバーされて来た名曲です。
「真っ当な人生を歩めよ」とならず者を諭す歌ですが、彼らも、普通のサラリーマンではなく、不規則な暮らしをしているためアウトローという劣等感をいつも感じていたため、ならず者にどことなく共感を感じているので、この歌詞が生まれたのです。哀愁に満ちた歌で、ドン・ヘンリーの男っぽい、渋い声が歌に合いすぎているといえるくらい素晴らしいバラードで、イーグルスの代表曲の1曲と言っていいでしょう。

 “Tequila Sunrise”と“Desperado”はグレンとドンの共作。このセカンドアルバムから、この黄金コンビのタッグが続いていくのです。

 6曲目“Certain Kind Of Fool”・・・ランディ・マイズナーの高音ボーカルがさえる曲。作詞・作曲もランディ。ドゥーリン=ダルトン一味がだんだん成功しなくなっている姿を歌っています。
 リード・ギターはグレン・フライ。後期にはギターのうまい、2人のメンバーが加入するため、グレンがリード・ギターを弾くことがほとんどなくなりましたが、グレンもなかなか味のあるギターを弾いていますよね。
 イーグルスのコンサートを実際に観たことのあるかたにはおわかりだと思いますが、グレンはある時はギター、ある時はピアノと曲ごとに担当する楽器が目まぐるしく変わるので、ステージ上で一番動き回っているのはグレンなのです。

 7曲目“Doolin-dalton (Instr.)”・・・インストゥルメンタルによるリプライ。ランディによるマンドリンに乗せてバーニーのバンジョーと重ね録りのアコースティック・ギターがブルーグラス調の曲になっています。

 8曲目“Outlaw Man”・・・重厚なドラムスとベースに乗せて、ハードなギターが重なります。曲はジョニー・ミッチェルの歌にも登場するデビット・ブルーという、同じアサイラム・レーベルのアーティストの作だそうです。でも、このアルバムのコンセプトにはぴったりですね。
 グレンのリードボーカルとそれに被さるコーラスが対照的で、強盗団のワイルドと哀愁を感じさせてくれます。

 9曲目“Saturday Night”・・・マンドリンとアコースティック・ギター、そしてベース、静かに4人がハモります。メンバー4人が共作している曲。土曜の夜に何があったのか分かりませんが、ドゥーリンが強盗になったきっかけが失恋にあったことを暗示させるような歌。

 10曲目“Bitter Creek”・・・Bitter Creekとはドゥーリン=ダルトン強盗団のひとり、ジョージ・ニューコムのニックネームなんだそうです。バーニーの作によるラテンの変拍子によるユニークなバラード。

 11曲目“Doolin-dalton/Desperado (Reprise) ”・・・このアルバムでハイライトとも言える2曲のリプライズ・メドレー。しかし、ここでのアレンジがよくて、ギターのハーモニックスなどクールに聴かせてくれます。バックは本当のストリングスも入っていますね。ドゥーリン=ダルトン強盗団の終焉を歌っています。
 初期のライブの最後のアンコールとして定番でした。

 このパートの“Desperado”では、“今は借りる時間すらキミらには残っていない。残っているものがあるのかい?ただの星屑だけさ。・・・でも、もしかしたら明日は・・・。もしかしたら明日こそ・・・。ならず者よ・・・、ならず者よ・・・”で終わって行きます。

 グレン・フライはその強盗団のたどった道と自分たちを重ねていたようです。「DESPERADO」のアルバムに関してこんな風に語っています。「あのアルバムは僕たちの思っていたことを正直に表現したものだったんだ。3枚目、4枚目のアルバムを出したとき、僕たちはどうなっているか分からない。聴く人々は僕たちの音楽が少しも代わり映えしないで同じことの繰り返し、いつか飽きてしまうだろう。だからそれを予想して、アルバムを作ったんだ。」なんと厭世的な考え方なんでしょう。
 しかし、ミュージシャンが人気商売で、飽きられればいつか忘れられていく、そんな気持ちをいつも彼らは持ち続けていたのでしょうね。

 つまり「DESPERADO(ならず者)」とは、まさに自分たちそのもの、そう気持ちをダブらせて作った哀愁に満ち満ちた作品だったのですね。まだまだ爆発的な人気はない時代の作品ですが、EAGLESのファンの中では非常に支持の高いアルバムだと思います。その悲哀感に共感できるものがいろいろとあるからでしょうか。

 音楽アーティストというのにはセカンド・アルバムのジンクスというのがあるようです。つまりデビュー・アルバムにはそれまでに長い年月を書き上げ、磨き上げて来た沢山の楽曲の中からよい曲を集めて収録できるから、いい曲が揃っているのが当たり前。しかし、セカンド・アルバムは多くの場合、ゼロから短期間で作らないといけないから、デビュー・アルバムとは雲泥の差がついて、結局多くのファンが失望し、失敗して行く・・・。アーティストに一発屋が多いのもそういう理由です。
 しかし、イーグルスは、セカンド・アルバムの重要性を心得ていました。アサイラム・レコードの創始者である、デヴィッド・ゲフィンのアドバイスも大きかったようですが、イーグルスはセカンド・アルバムの重要性をよく心得ていたようです。だから、「DESPERADO」をコンセプト・アルバムにして、アルバムに統一性を持たせ、聴く者を飽きさせないように工夫をしたのです。“Desperado”や“Doolin-dalton”をアレンジを変えて何度も入れているのも、トータル性を示すためです。
 特に“Doolin-dalton”はデビュー・アルバムが発売する前に、すでに出来ていた曲のようです。グレン・フライ、J.ブラウン、J.D.サウザー、ドン・ヘンリーという最強の集団で書き上げた佳作。敢えてセカンド・アルバムまで持ち越したのも、イーグルスの戦略だった訳です。デビュー・アルバムの1曲目“Take It Easy”よりインパクトは弱い曲ですが、この曲で始めることにより、このアルバムのトータル性を強調したかったのです。
 唯一、ハードなロックが“Out Of Control”で、この曲がアルバムのコンセプトとは異質のように思えるかも知れませんが、このタイプの曲こそが実はグレン・フライがやりたい曲であり、自分たちは単なるカントリー・ロックバンドじゃないのだ、そして、俺たちはどんどん変化して行くんだという心意気を示したかったようです。今は人気があっても、明日はどうなるか分からないのがミュージシャンの世界。だからこそ、グレン・フライやドン・ヘンリーは常に次をどうするかを考えていたようです。

 もっとも、このアルバムが発売された当初はそのアルバムの価値が理解されずにセールス的には失敗したアルバムと言われました。“Desperado”をシングル・カットすれば絶対ヒットしたでしょうが、敢えてしなかったのは、グレン・フライやドン・ヘンリーがロック志向を強めていたからだと言われています。しかし、このアルバムの良さは次第に評価されて、プラチナ・アルバムの仲間入りしています。