DEEP PURPLE IN ROCK/DEEP PURPLE(ディープ・パープル・イン・ロック)

2020年5月2日

 

DEEP PURPLE IN ROCK/DEEP PURPLE

 

 

1. Speed King

2. Bloodsucker

3. Child In Time

4. Flight Of The Rat

5. Into The Fire

6. Living Wreck

7. Hard Lovin’ Man

 

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

※ジャケットは発売された国や時期によって各種あるので、ご了承ください。ここで紹介しているのはイギリス盤のオリジナル仕様。アメリカのサウスダコタ州にあるラモシュア山にアメリカの4人の大統領の顔が掘られた岩がありますが、このジャケットはその岩をもじったもの。「IN ROCK」の“rock”は当然ながら、岩という意味と音楽のロックの二つの意味を込めてあります。

 さて、アルバムの解説に入る前に、「DEEP PURPLE IN ROCK」が発表されるまでの状況を少し書いておきます。DEEP PURPLEⅡ

 1969年9月末のロイヤル・フィルとの共演を終えたのち、新生PURPLEはイギリス国内ヨーロッパでライブを重ねて行きました。ボーカリストのイアン・ギランもベーシストのロジャーも彼らが加入する前の古い曲も覚える必要がありましたが、徐々に新しい曲も作って行って、ニュー・アルバム登場より前にかなり新しい曲を彼らはもうプレイし始めていたのです。

 ライブの合間を縫って1969年の8月から翌年2月まで新生DEEP PURPLEはニュー・アルバムをレコーディングしていました。より、クラシカルな路線に向かいたいジョンとLED ZEPPELINのようなハードなロックがやりたいリッチーとの間で意見が分かれましたが、リッチーがBBCの企画によるオーケストラとの共演に参加する代わりに1度試しにハードなロックアルバムを作って勝負させて欲しいというリッチーの願いをジョンは聞き入れました。リッチーは1枚のアルバムが売れなければ、残りの生涯をジョンと一緒にクラシカルなロックに費やす覚悟でいたのです(リッチーの性格上、本当にそうなったら約束を果たしたかは大いに疑問ですが)。

 1970年に入ると、2月には実力を認められたイアン・ギランの下に大ヒットしていたミュージカル(ロック・オペラとも言われた)「ジーザス・クライスト・スーパー・スター」のレコード化に伴うイエス・キリスト役の依頼が届きました。
 突然の大役の依頼に一番驚いたのはギラン本人でしたが、他のメンバーもこの依頼を心底喜び、ギランは喜んでレコ-ディングに参加しました(私もレコードを持っていますが、ギランの歌は素晴らしいですし、アルバム自体も聴き応え十分です)。

 さて、輝かしいDEEP PURPLE IN ROCKのオープニングを飾るのは“Speed King”です。実はこの曲はイギリス盤に入っている物とアメリカ盤や日本盤に入っている物では仕様が異なっています。アメリカ盤等のヴァージョンではいきなりヴォーカルが始まるのに対し、イギリス盤ではリッチーのハードなギターソロが流れたあと、ジョンのクラシカルなオルガンの音が響き、ボーカルが始まるのです。どちらがいいかは好みの問題ですが、違うヴァージョンが入っているというのを当分知りませんでした(PRPLEのアルバムはこういうことが他にもあります)。発売当初の国内盤は、アメリカのハーベストから、版権を買っていたので、いきなり歌が始まるヴァージョンです。

 LED ZEPPELINの作るハード・ロックはブルースを貴重にしたものであるのに対して、DEEP PURPLEの作るハード・ロックはクラシックの要素を備えた様式美のあるハード・ロックでした。日本人はこの様式美を好むと言われているので、日本ではLED ZEPPELINよりDEEP PURPLEのハード・ロックを好む人のほうが多いのだろうと分析されていました。DEEP PURPLE Studio Live

 しかし、クラッシックっぽい音楽をやっていたグループがこうも変わるというのはビックリですね。最後には大胆素敵にもイアン・ギランの笑い声まで入るという構成にも驚きです。なんとも小気味よいオープニング・ソングですね。

 2曲目、“Bloodsucker” イアン・ギランのハイトーンボイスが光る曲。ロジャー・グローバーの地味ながら着実なベースラインも心地良いですね。リッチーのギターも水を得た魚のように生き生きとダンスしている感じ。

 3曲目 “Child In Time” 印象深いイントロのメロディラインは実はアメリカのバイオリンをフィーチャーしたIT’S A BEAUTIFUL DAYというグループの“Bombay Calling”をパクったということはリッチー自身が公言しています(試しに原曲を聴いてみてください⇒Bombay Calling)。 それにしてもこのイアン・ギランのファルセットは素晴らしいですね。リッチーの前半のスローなフレーズも後半の速弾きも非の打ち所がありません。この曲は1969年9月24日までにはできていて、ロイヤル・フィルとの共演の日には、オーケストラと共演する前のPURPLE単独の演奏の際にはすでにプレイされていました(最近のロイヤル・フィルとのCDには入っています)。

 このアルバムのハイライトと言っていいくらいの曲でハード・ロックの名曲中の名曲と言っていい金字塔と言えるでしょう。

 4曲目 “Flight Of The Rat” リッチーがこれからのDEEP PURPLEはイニシアティブを取るんだといわんばかりのギター・フレーズです。今までのフラストレーションが一気にこのアルバムで炸裂し、吹っ切れたって感じの演奏でしょうか?しかし、ただ単に弾きまくっているだけでないアレンジの妙が様式美と言われるゆえんなのでしょう。イアン・ペイスのドラミングもますます迫力が増し、拍車がかかって来た感じですよね。

 5曲目 “Into The Fire” この曲も当時のDEEP PURPLEがライブでよく演奏していた曲で、ミドルテンポながらなじみやすいフレーズで、1972年の来日公演ではライブのレパートリーから外されてたいたことが残念でした。

 6曲目 “Living Wreck” ギターのリフが口ずさみたくなるカッコいい曲。間奏のギターソロもいいです。

 7曲目 “Hard Lovin’ Man” この曲も何とも小気味の良いフレーズで、ギランのシャウトも素晴らしい。ただし、イアン・ギランって語彙が乏しいんでしょうかね?
 Speed KingもHighway Starも同じ車がハイスピードで走る歌だし、Highway Starにも出て来るShe is a killer Mashineというフレーズ(Highway Starは“It’s a~”でしたけど)がここにも出て来ます。

 前のレコードが倒産してDEEP PURPLEはワーナー・ブラザーズと1年に2枚のアルバムを出すという条件で契約しています。正直年2枚はきついですよ。そういう意味で次の「FIREBALL」も「WHO DO WE THINK WE ARE」もツアーの合間にささっさっとレコ-ディングしているので、クオリティの面でメンバーは満足し切ってないのです。

 このアルバムはリッチーが本腰入れて作っただけあって、そのクオリティは半端じゃないです。そんなワケでイギリスでは1970年6月に発売されてアルバムランキング4位まで行きました。DEEP PURPLEがイギリスでの著名度を上げるために津々浦々までツアーした成果でもありますが。

 7月にはアルバムに収録されてない“Black Night”をシングルでリリース。この曲も全英2位に入るヒットを記録。実はこの曲はシングルのB面に入れるつもりでギランとロジャーが遊びで書いた歌詞だったというけれど、シングル向きのキャッチーなメロディで結果オーライということでしょう。
 ちなみにこの曲のギター・フレーズはRicky Nelsonという人の“Summertime”という曲のパクりだとリッチーが言ってました⇒“Summertime”

 DEEP PURPLEはパクった場合、ちゃんとインタビューとかでその話をしてるだけに可愛いものだと思います。LED ZEPPELINなんてパクり放題。あの名曲“天国への階段”すらパクり疑惑があったて知ってましたか?⇒比較

 


 値段も比較的安いので25周年記念で発売された、オリジナル・マスターとロジャー・グローバーがリミックスしたヴァージョンが聴ける以下のCDをオススメします。正直、さほど変わらないように思えますが