LITTLE FEAT <1ST ALBUM> (リトル・フィート・デビュー/リトル・フィート)

2020年4月22日

 

LITTLE FEAT / LITTLE FEAT

1. Snakes On Everything

2. Strawberry Flats

3. Truck Stop Girl

4. Brides Of Jesus

5. Willin’

6. Hamburger Midnight

7. Forty For Blues/ How Many More Years

8. Crack In The Door

9. I’ve Been The One

10. Takin’ My Time

11. Crazy Captain Gunboat Willie

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

※発売時期や国によって多少ジャケットが異なりますので、ご了承ください。

 LITTLE FEAT(小さな偉業)とはなんとオシャレなネイミングなんでしょう。リーダーのローウェル・ジョージがデブで短足だったことから“little feet”と引っかけたネイミングでしょうが、シャレっ気たっぷりですよね。

 このLITTLE FEATというバンドはとにかく玄人受けするバンドでした。英語でいうと“musician’s musician”って言います。ミュージシャンが好むミュージシャンって訳です。1970年代の前期頃は来日するアーチストに「どんなアーティストが好きですか?」という質問するとLITTLE FEATと答える人は少なかったようです。LED ZEPPELINのジミー・ページもそうだった記憶が。ROLLING STONESのミック・ジャガーもよく名前を挙げていたと思います。

 そして我が国ではサザン・オールスターズの桑田佳祐さんなどもこのLITTLE FEATが大好きだったって話は有名ですよね。ティンパン・アレイが解散したあと、ギタリストの鈴木茂もロスに行って、LITTLE FEATと共演してアルバム作ったようですし、矢野顕子もデビュー・アルバムの「JAPANESE GIRL」は何曲かLITTLE FEATがバックをやっています。

 とにかく、ローウェル・ジョージって人は才能豊かな人で、ボトルネック・ギター(丸い輪っかを左指にはめて、フレットを押さえる代わりに、弦の上をスライドさせて弾くために、スライド・ギターとも言われますが、昔はこの輪っかがビール瓶などの細いネックを切ったものだったことからボトルネック奏法との呼ばれます)の第一人者のひとりと言っていいでしょう。グラミー賞を受賞したこともある、ボニー・レイットさんもこのローウェルから直々にボトルネック・ギターを習ったと言います。

 ボーカルも白人なのに、黒人の味のする渋い声を出すおかた。

 元々はフランク・ザッパのバンドMOTHERS OF INVENTIONにいたのですが、ザッパ氏に「おまえはうちのバンドでくすぶっているより、バンドを組んで自分でやったほうがいいよ」と勧められて、独立したそうです(ドラッグをやらないザッパ氏がローウェルの作った“Willin’”を聴いて、歌詞にドラッグを連想させる内容が出て来ることから、ザッパが演奏する曲として採用せずに自分で歌うように促されたと言います。体よく首になったという説もあります)。

 1969年ローウェル・ジョージは同じくMOTHERS OF INVENTIONにいたベーシストのロイ・エストラーダ、それにキーボードのビル・ペイン、ドラマーのリッチー・ヘイワードの4人でロサンジェルスで結成されました。

 デビュー・アルバムが発表されたのは1971年のことです。晴れ上がったカリフォルニアの空の下、雪が積もった道にひっそりと建つマーケットの前でコートを着たメンバーが4人の写真が掲載された表ジャケットが意図するものは何だったのでしょうか?

 裏ジャケットも屋根の上でホウキを逆さまに持って立っているロウエルと左右を探し回っているかのようなメンバーのおかしな写真が載っています(1枚目の写真)。little feat 1st

 ちなみに、ジャケットのコンセプトを考えたのは、このアルバムのプロデューサー、ラス・タイトルマンの妹で、写真家でデザイナーでもある、スーザン・タイトルという人だそうです。このアルバムにはゲストとしてライ・クーダーがギターを弾いているのですが、スーザン・タイトルはのちに、ライ・クーダー夫人となる人なのです。

 さて、デビュー・アルバムですが、ローウェル・サウンドはカントリー、フォーク、ブルースなど何でも取り込みさらに彼独特のアイロニーを盛り込んだ独特のサウンドという感じでしょうか?ただ、まだまだ青臭さがあるので、受けなかったのかも知れません。

 私がLITTLE FEATを知ったのは1973年頃だったと思いますが、当時はまだ日本ではこのデビュー・アルバムは発売されておらず、輸入盤を1,000円くらいで買った記憶があります。代表作の2枚目、3枚目辺りを聴いたあとだったので、最初は印象が今イチでしたが、ハードな曲もあって、なかなか味のあるアルバムだと思います。

 どのアーティストでもだいたいそうだと思いますが、デビュー・アルバムというのは、そのアーティストのルーツ(影響を受けて来た音楽)を理解する上で重要です。このデビュー・アルバムにはハウリング・ウルフという黒人ブルースマンのカバー曲“Forty For Blues/ How Many More Years”メドレー形式で収録されており、ロウエルの音楽的なスピリッツはブルースに根ざしていることが推察できるのです。

 さて、個々の楽曲ですが

 1曲目“Snakes On Everything”・・・キーボードのビル・ペインの作品。かなりハードな音作りで、若い頃のROLLING STONESを思わせるような曲。しかし、スライド・ギターはすでにローウェル節になっています。フェイドアウトするには勿体ない曲です。

 2曲目“Strawberry Flats”・・・ローウェルとビルの共作。ビルのピアノが存在感があります。東のTHE BAND、西のLITTLE FEATと言われていたこともあり、泥臭さは共通しているので、THE BANDを知っている人はTHE BANDの曲と思うかも知れませんね。ギターも少しだけフィーチャーされており、もう少し聴きたいというところで終わってしまい残念。

 3曲目“Truck Stop Girl”・・・ローウェルとビルの共作。THE BYRDSがカバーして先に発表しており、そっちのほうが有名ですが、どちらも味があると思います(ただし、歌詞のイメージやギターの味でLITTLE
FEATのほうに軍配が上がるかと私は思います)。若いトラック運転手がトラック停車場の女と恋に落ちる話。悲しい結末が待っています。

 よろしければTHE BYRDSバージョンと聞き比べてみてください⇒こちら

 4曲目“Brides Of Jesus”・・・ローウェルとビルの共作。途中オーケストラも入りなかなかの佳作ですが、ロウエルより少し細いボーカルのビルの声が少し迫力不足の感もあります。

 5曲目“Willin’”・・・これがローウェルがザッパのバンド時代に作っていた問題の曲。右チャンネルのスライド・ギターがライ・クーダー。ギター2本にボーカルというシンプルな構成ですが、味はあると思います。

 6曲目“Hamburger Midnight”・・・ローウェルとベースのロイ・エストラーダの共作。ローウェルのボトルネック・ギターをフィーチャーしたブルースで、ギターとユニゾンで歌うボーカルもひょうきんで面白いです。

 7曲目“Forty For Blues/ How Many More Years”・・・ハウリング・ウルフの曲っぽくわざと声にディストーションをかけているのが面白いです。ローウェルの吹くマウスハープ(ハーモニカ)も乙なもの。カバー曲とは言え、ローウェルが歌うとやはりローウェル節になってますね。アコースティック・スライド・ギターはライ・クーダー。これも味があります。

 8曲目“Crack In The Door”・・・ローウェルの作品。ローウェルの作品はどうしようもないダメ男が主人公のことが多く、この曲も彼女の親父さんを怒らせて、街を出て行かないと生かしちゃおかないと言われた男の物語を歌っています。こういう悲哀がロウエルのブルース・スピリッツなのでしょう。

feat 1st

 9曲目“I’ve Been The One”・・・ローウェルの作品。かなりC&Wっぽい曲調。ペダル・スティール・ギターを弾いているのは、スニーキー・ピート(カーペンターズの“Top Of The World”や“Jambalaya”やジョン・デンバーやジャクソン・ブラウンなどの曲でペダル・スティールを演奏していたベテランです。2007年に72歳で他界されています)。その縁でか後にジャクソン・ブラウンがカバーしています。アル中になった男の救いようがない孤独な歌です。

 10曲目“Takin’ My Time”・・・ビルの作品。オーケストラとピアノをバックに歌う壮大な歌ですが、やはりビルの声は細くて存在感が薄いです。

 11曲目“Crazy Captain Gunboat Willie”・・・ローウェルの作品。ボーカルもローウェル。ピアノとトランペット(シンセサイザーで合成か?)だけのバックという斬新さですが、曲調はひょうきんで、もう少し聴かせて欲しい曲調。

 やはり、ローウェル・ジョージのマインドはブルースがぴったりと言えるでしょう。やがて、ローウェル自身クスリに冒されて帰らぬ人となったことを考えると彼自身が悲しき人生を面白く笑い飛ばして生き去っていったという感じがします。