LED ZEPPELIN IV / LED ZEPPELIN(レッド・ツェッペリンIV/レッド・ツェッペリン)

2020年4月8日

 

LED ZEPPELIN IV / LED ZEPPELIN

1. Black Dog

2. Rock 'N’ Roll

3. Battle of Evermore

4. Stairway to Heaven

5. Misty Mountain Hop

6. Four Sticks

7. Going to California

8. When the Levee Breaks

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

 ツェッペリンのアルバムで一番好きなのは?と尋ねられて、その答えが多いのはおそらく2枚目かこの4枚目だと思います。中でもこの4枚目のアルバムは永遠のロック・バラードとも言える、ロック史に残る名曲Stairway to Heaven”が収録されているから人気が高いアルバムと言えるでしょう。オンタイムで初めて聴いたツェッペリンのアルバムでもあり、実は私も一番好きなアルバムです。

 しかし、このアルバムの表ジャケットにはグループ名もタイトルも全く表記がありません。ダブルジャケットの表面には剥がれた壁にかかる薪を背負った老人が木を杖代わりにして立っている絵。裏はそれとは対照的な煉瓦のアパートが建ち並び、遠くにはビルがそびえ立っています。

 4simbols

 レコード会社はタイトルのクレジットすらないジャケットに戸惑い、セールスする上で問題があると、グループ名やタイトルの表記を要求したようですが、ツェッペリン側はこれを拒否。代わりにレコード袋に印刷された4つのシンボルマーク(メンバー4人を象徴するトレードマークのようです。向かって左よりジミー・ペイジ、ジョンポール・ジョーンズ、ジョン・ボーナム、そしてロバート・プラントのトレードマーク)から、「4 Simbols」とか単に「Simbols」と呼ばれたり、ジミーのシンボルの文字が「Zoso」と読めることから「Zoso」と呼ばれたり、これまでの流れで「LED ZEPPELIN IV」と呼ばれたり、また代表曲から「Stairway Album」と呼ばれたりしているようです。

 日本では帯に「レッド・ツェッペリンIV」と入っていたことから、そのまま“ツェッペリンIV”と呼ばれることが多いようです。いずれにしても、正式なタイトルはなく、レコード会社が心配した評判はむしろ、タイトルがないことがかえって評判を呼び話題になり、セールス効果も上がったようです。

 さて、このアルバムは1970年12月から録音を開始したようです。まずはロンドンのアイルランド・レコードのスタジオで録音を始めたようですが、ツェッペリンがよく使ったことで有名になったヘッドリィ・グランジという古い屋敷に、ローリング・ストーンズが所有していたモービル・レコーディング・ユニットをレンタルしてレコーディングを1971年5月まで続けたということらしいです。

 発売は1971年の11月。全米の総セールスは今までに約2,300万枚といわれ、ツェッペリンのアルバムの中で一番売れたアルバムと言われています(もっとも発売当時アメリカでは1位にはなれなかった代わりに、5年間トップ200位以内に留まるロング・セラーとなっています)。3枚目のアルバムが評論家にかなり叩かれただけに、アルバムの構成や曲作りにはかなり気を遣ったようです。3枚目は地味なアルバムでしたが、アコースティックの曲作りがこのアルバムで花開いた感じで、佳作揃いで捨て曲がないと言っていいでしょう。

 では、各曲のレビューを。

 1曲目“Black Dog”・・・曲名はヘッドリィ・グランジの近くをうろついていた野良犬からついたと言われています。しかし、歌詞の内容は女性の愛欲に関して歌ったもの。リフはジョン・ポール・ジョーンズがブルースマンのマディー・ウォーターズばりのフレーズを作りたくて思いついたそうです。
 当時はかなり斬新な曲展開だと思いましたね。クールというかおしゃれ。グルーブ感が半端じゃない。ドラムがダイナミック!
 ジミー・ペイジのプロデューサーとしての腕前は本当にスゴイと思います。トータル・バランスというのか、メンバーの力量を最大限に活かす曲構成はすごく、またこの曲はろくにイントロもなく歌をもって来て、逆にエンディングで延々インストロメンタルでひっぱるという構成目新しくてビックリでした。

 歌のメロディーはFLEETWOOD MACの初期の名曲“Oh Well”からインスパイアされたものなんだそうです。

 2曲目“Rock 'N’ Roll”・・・ローリング・ストーンズのモービル・ユニットの管理人をしていたピアニストのイアン・スチュアートも加えて、ジャムっていたリトル・リチャードの“Keep A Knockin'”のセッションからたまたま生まれた曲ということのようです。ジョン・ボーナムが“Keep A Knockin’”のイントロを叩き始めたのに続いて、ジミーがギターをアドリブで入れて、この曲が出来たとのこと。名曲って結構簡単にできる(生みの苦しみがない)ことが多いようです。
 コンサートでは1975年頃まではオープニングを飾ることも多かったようです。たしかに、一気に乗れるキャッチーな曲ですね。

 3曲目“ Battle of Evermore”・・・ジミー・ペイジのマンドリンで始まる美しい曲。ヘッドリィ・グランジでジミーが遊びでジョン・ポールのマンドリンをつま弾き始め、それに即興的にロバートが歌をかぶせたのがこの曲の原曲だと言われています。
 ロバートが自分の歌以外に女性のボーカルも入れて、掛け合う歌にしたいと言い出し、ジミーの知り合いだったイギリスの女性フォーク歌手であるサンディ・デニーに頼んで歌ってもらったと言われます。ツェッペリンのオフィシャル・アルバムの中で唯一ロバ-ト以外の歌が入っている曲。
 神聖でうら悲しくもある曲は次に続く前奏曲のようにも聞こえ、効果的な構成だと言えるでしょう。

 4曲目“ Stairway to Heaven”・・・私が初めて買ったLPレコードにはこの曲の長さが12分以上あると書いてあったのですが(実際は約8分)、邦題でいうと“天国への階段”で、12分もあるとするとかなり壮大な曲なのだろうな、と初めてアルバムを手にした時は思った記憶があります。アルバムの裏ジャケットにもランタンをてっぺんでかざした神のようにも見える老人を目指して険しい山をよじ登っていく女性の絵が描いてあり、この曲のことだと分かります。
 レコード袋にはこの曲の歌詞が印刷されています(CDでは中のブックレットに記載)。それだけこの曲がこのアルバムの中でも特別の曲であることがよく分かります。
 アコースティックギター1本とリコーダーの演奏で寂しく始まるこの曲はフレーズを少しずつ換えては繰り返し、徐々に盛り上がっていくというロンドまたはフーガのよう。
 大きく分けると3つのパートから出来ており、ギターとリコーダーだけだったパート1から、パート2はギターが12弦のアコースティックになり、エレピっぽいピアノが小さく入ります。
 パート3では12弦のエレキが入り、ドラムスが入ると曲が急に厚みを帯びてそこからはギターソロで泣かせてくれて一気に佳境に入った感じに盛り上がります。
 歌詞は難解で統一性がないと言われていますが、ロックの名曲と言われて上げるなら10曲のうちにはきっと選ばれるでしょう。
 イントロ部分は一緒にツアーをやっていたSPIRITというバンドの“Taurus”にそっくりと言われています(ただし、そのクレジットはなし)。たしかに似ていますね。

 「盗作疑惑」に関しては、スピリットのギタリストで「トーラス」を作曲したランディ・ウルフ氏の財団と長年裁判で争われて来ましたが、2020年にやっと「盗作には当たらない」という判決が降りたという記事がCNNのサイトに掲載されていました参考のCNNのページ⇒こちら)。

 5曲目 Misty Mountain Hop”・・・レコードですとここからB面です。“ Stairway to Heaven”の感動の余韻にひたってから改めて聴き始めて欲しいという配慮なのでしょう。その点CDだと酷ですよね。
 ジョン・ポール・ジョーンズのエレピをフューチャーした曲でグルーブしています。ノリがいい曲なので当時ディスコでもよくかかっていたようです。

 6曲目“Four Sticks”・・・ジョン・ボーナムがリズムを強調するために、片手に2本、両手で4本のドラム・スティックを持って叩いたことからこのタイトルがついたということです。アフリカ音楽かラテン音楽のようにリズムが刻まれており、ロックの枠を超えたオールタナティブな曲に仕上がっています。

 7曲目“Going to California”・・・ロバートが敬愛するアメリカの女性フォークシンガーのジョニー・ミッチェルを讃えて作ったアコースティックな曲。しかし、曲は全然カリフォルニアっぽくない短調の曲です。ツェッペリンがアコースティック・パートをコンサートでやる時には必ず演奏されていた曲です。ジミーのアコースティックギターとジョン・ポールのマンドリンが静かにサポートしロバートのハイトーン・ボーカルがよく響く心地良い曲です。

 8曲目“When the Levee Breaks”・・・オリジナルはアメリカのブルースマン&ウーマンのカンサス・ジョー・マッコイとメンフィス・ミニー。オリジナルの曲はアコースティック・ギター1本で素朴に歌っているが、ツェッペリンは大胆にハード・ロックっぽくアレンジしています。
 ロバートのハーモニカが印象的です。レコーディングにはかなり苦労したようで、ハーモニカではテープの逆回しの効果を付けたり、ジョンのドラムスのマイクを吹き抜けの天井の2階にセットして録音するなどかなり凝った音作りになっています。
 幻想的な音に聞こえるのはそのテクニックのせいでしょう。ジョンは自分のドラムの音になかなかOKを出さす、何度も試行錯誤を繰り返して録り直しています。その結果満足した演奏になり、多くの評論家も究極だと絶賛されている演奏です。

 さて、ロバート・プラントは次のアルバム「HOUSES OF HOLY」のレコ-ディング途中(1972年のアメリカン・ツアーの最中)に喉を傷めて、手術をしています。その後は喉が本調子でなくなり、このアルバムの曲以前の曲をライブでは1音下げて歌うようになっています。ですので、彼の絶頂期の素晴らしいハイトーンボーカルを満喫できる録音は残念ながらこのアルバムが最後ということになりました。

 ハード・ロック・グループという枠を超えたグループというような印象を与えたのもこのアルバムが功を奏しているからだと思います。

 なお、ツェッペリンは1971年の9月下旬と1972年の10月初旬の2回、来日公演を行っています。1971年はこの「IV」発売前ですが、どちらの公演も「IV」までの曲を中心に演奏されています。彼らの選曲は毎晩まちまちで、3時間以上演奏したかと思えば(ロバート・プラントがエルビス・プレスリー・フリークであることは有名で、プレスリー・メドレーを延々歌われた夜も)、2時間ほどで終わることもあったようです。

 注目すべきは初来日時の広島県立体育館のライブは、チャリティー公演と銘打たれ、被爆者のために売上金のほぼ全てである約700万円が寄付されていること。同じハード・ロック・バンドのDEEP PURPLEも1973年に広島公演(原爆ドームに近い広島公会堂)を行っているが、このようなチャリティのショーとはなっていません。


ついに、ジミー・ペイジのプロでユースした、2014年リマスター決定盤がでました。スペシャル・デラックス盤には未発表曲もしっかりと!