LED ZEPPELIN III / LED ZEPPELIN (レッド・ツェッペリンIII / レッド・ツェッペリン)

2020年4月10日

 

LED ZEPPELIN III / LED ZEPPELIN

1. Immigrant Song

2. Friends

3. Celebration Day

4. Since I’ve Been Loving You

5. Out On The Tiles

6. Gallows Pole

7. Tangerine

8. That’s the Way

9. Bron Y Aur Stomp

10. Hats Off To (Roy) Harper

※曲目はオリジナルアルバムの曲目を紹介しております。

 発売されたのは、セカンド・アルバムから約1年後の1970年10月。よって、じっくりと時間をかけて作られたことになります。しかるに、10曲のうち、2,6~10の6曲がアコースティック・ナンバー。今まで通りのブルージーなハード・ロックを期待したファンは肩すかしを食らわされたことになります。そこで発売当初は失敗作という評判が多かったようです(もっとも、聴く人が気に入ればいいだけの話なのですが)。
 カテゴライズの好きな評論家たちはツェッペリンはハードロックでなくなった、などとコケ下ろしたようです。

 もっとも、そんな批評が出るのはメンバーは初めから見越していたようで、自分たちにはいろんな面があるということを知って欲しかったようです。実際、キャッチーでありながら、叫び声で始まる1曲目や非常にブルージーな4曲目など、かつてのツェッペリンらしさを出している曲も含まれているのですから。
 叩かれながらも、アルバムはアメリカ、イギリスでは発売と同時にヒットチャートの1位まで上がっている(アメリカでは予約だけで100万枚突破)のですからさすがです。こういう自由なことができるというのは、ツェッペリンがしっかりとした地位を確立したからとも言えるでしょう。

 毎回ジャケットの遊び心も楽しいのがツェッペリンのアルバム。中に回転式のドラムのような丸い絵が入っていて横から回転させることで大小様々な円窓から覗く絵柄が変わって見えるものですが(見たことがないかたはレコードのジャケットか紙ジャケット仕様のCDを手に取ってご覧ください)、実際にはもっと高尚な図柄になる(“Bron Y Aur”で感じた自然の世界観を表現したかったようです)予定でしたが、デザイナーがジミー・ペイジの意図を理解せず陳腐なものになったとジミーがあとでコメントしています。

 では、各曲のレビューを。

 1曲目“Immigrant Song”・・・私がツェッペリンを知るきっかけになった曲です。深夜放送ラジオでこの曲(邦題はそのまま“移民の歌”というタイトルですが)を聴いたとき、女性が歌っているとばかり思い、「レッド・ツェッペリン」というのが歌っている女性の名前かと思っていました。
 歌っている人の写真を見た時も、ロバート・プラントが長髪なので、女性だと思ったくらいでした。
 先ほども書いたように、歌い出しがいきなり“アーアア~”という叫び声という画期的な曲ですが、ロバート・プラントがツアーで初めて訪れるアイスランドのバイキングのイメージで書いたというアグレッシブな曲調は聴く者に深く心をつかむ印象的な曲です。曲の長さが約2分30秒という非常に短い曲ながら、一曲聴くだけでアドレナリンがたっぷり出てしまう位の充実感が味わえます。

 2曲目“Friends”・・・イギリスのトラディショナル・ソングやアメリカは西海岸のカントリー・ロック・グループのBUFFALOES SPRINGFEILDSなどが好きというジミーだが、この曲はツェッペリン独特の世界観があるように思えます。元BUFFALOES SPRINGFEILDSのメンバーもいるクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングの曲“Carry On”に似ているとも言われるが、弦楽器とアコースティック・ギターにボンゴが加わるという独特な雰囲気はC.S.N.&Yの曲とはかなり異なるように私には思えます。ペイジ独特の変則チューニングの奏でるギターの音がミステリーなサウンドを生み出しています。ギターにはハーモニーの調和を高めるためにアルテア・チューブ・リミッターというエフェクターを使っているとのことです。
 隠し味程度にシンセサイザーも使っているとのこと。人気に甘んじることなく、常に実験的なことをやっていたのもツェッペリンの特徴かもしれません。
 ツェッペリン時代にはライブでほとんどプレイされることはなかったようですが、唯一1971年の初来日時の大阪公演でプレイされた記録が残っています。

 3曲目“Celebration Day”・・・間髪を入れずに3曲目が始まります。これはミスでマスター・テープでイントロ部分にノイズが入ってしまったための苦肉の策だと言われています。
 ジミーのギターが多重録音されて、音に厚みを出しています。キーボードはジョン・ポールが弾いているようです。
 スタジオ・アルバムの場合は歌を引き立てるのが第一義なので、ギターのフレーズはそれほど目立ちませんが、かなり独創的で耳に残るフレーズです。ジミーの場合はコードのストロークで聴かせるタイプのプレイも多いですね。
 歌詞はニューヨーク市から受けた印象をロバートが書いているので、コンサートでは“New York Song”とよく紹介されていたようです。タイトルの“祭典の日”からするとおめでたいイメージですが、むしろ寒々とした大都会の重々しさを歌っています。

 4曲目“Since I’ve Been Loving You”・・・セブン・イレブンではないですが、朝の7時から夜の11時まで働いている男の悲恋のストーリーです(余談ですが、セブン・イレブンというコンビニは今ではほとんどのお店が24時間営業<一部駅ビルやビジネスビル、国会の中など夜になるとクローズしてしまうビルのテナントなどを除き>ですが、その名の由来は朝の7時から夜の11時まで営業していたことにあります)。
 泣きのギターとスローなドラムのイントロが非常にブルージーで、男の悲哀を歌うにはぴったりの曲です。
 ジョン以外の3人の名前が作者としてクレジットされていますが、この曲も歌詞が1960年代にアメリカで活躍したサイケデリック・ロック・バンドMOBYGRAPEの“Never”という曲のパクリではないかとも言われているようです。
 私はかつて悲しいことがあって泣きたいような気持ちの時にこの曲を繰り返し聴いていました。ロバート・プラントの声は高音ながら耳をつんざくような嫌味がないので、心地良く、落ち込んた心をいやしてくれる効果が(少なくとも)私にはあります。同じハード・ロックのボーカリストのDEEP PURPLE イラン・ギランとはこの点が違いますね。

 5曲目“Out On The Tiles”・・・ドラムスの変則リズムが印象的でグルーブ感があるこの曲はドラムスのジョンがイニシアティブを取って作られた曲。ギター・ソロさえないが、耳に残る曲です。コンサートでは単独で演奏されることは少なく、“Black Dog”の前奏曲として1971~1972年頃、イントロのインスト部分だけ演奏されることが多かったようです。

 6曲目“Gallows Pole”・・・トラディショナルなフォーク・ソングをジミーとロバートがアレンジした曲。ツェッペリン解散後、ジミー・ペイジ&ロバート・プラントのコンビでプレイした時もこの曲を演っているので、結構気に入っていたのかも知れませね。後半ではフラット・マンドリンの音も入りますが、これもジミーが弾いているはずです。ツェッペリン時代のライブでは1971年のコペンハーゲンなどで1・2度プレイされただけのようですが、ライブではアルバムよりかなりハードな演奏になっていたようです。

 7曲目“Tangerine”・・・12弦のアコースティックギターの清らかな音が心地良いこの曲はジミーがYARDBIRDS在籍時に作った曲だそうです。ライブでは残念なことに、アコースティックではなく、イントロからWネックの12弦(“Stairway To Heaven”の演奏で使われるもの)でプレイされていました。
 アルバムでは(も)途中からエレキ・ギターが入り、最後はワウ・ペダルのついたスティール・ギターと凝ったアレンジになっています。ハードなサウンドしか聴かないかたにはつまらないと思いますが、味わい深い曲だと思います。ライブでは楽器をとっかえひっかえされてないのがつまらないですけども。
 ジミー・ペイジはかなりいろんな楽器を使い分けていたことで有名な人です。またいろんなオープンチューニング(弦を押さえないで弾いた時、長音コードになっているようなチューニング方法)を使っていたことでも知られており、そういう意味では職人肌のプレヤーだと言えるでしょう(逆にいうとこれと言った芸がないとも言えますが)。

 8曲目“That’s the Way”・・・ペダル・スチール・ギターやマンドリンを使ったアコースティックな曲。しかし、アメリカ西海岸のサウンドというより、やはりイギリス人っぽいウェットな感じの音に仕上がっています。バスドラなどは全然入らない軽いサウンドには仕上がっています。

 9曲目“Bron Y Aur Stomp”・・・邦題では“スノウドニアの小屋”というタイトルですが、スノウドニアの小屋は実在していて、非常に牧歌的な自然豊かなのどかなところです。曲もまさにそれを象徴するような清々しいアコースティックな曲に仕上がっています。
 クレジットはジョンを除くメンバー3人の作品とありますが、フォーク・シンガーのアン・ブリックスの曲からインスピレーションを受けたのではと言われています。
 途中で手拍子も入って軽やかでピクニックにでも行っているような陽気な感じで楽しい歌です。

 10曲目“Hats Off To (Roy) Harper”・・・黒人ブルースマン ブッカー・ホワイトの“Shake 'Em On Down”をアレンジしたチャールズ・オブスキュアーの曲をアレンジしたものです。題材になっているロイ・ハーパーという人はイギリス人のシンガー・ソング・ライターでロバートがロイのファンでジミーを何度か彼のライブに伴って行ったことから交遊が始まり、その後、ジミーがロイのアルバムに参加してギターを弾いています。
 ミキシング効果もあってかなりグルーブがある曲になっています。

 こうしてこのアルバムで培われたアコースティックの曲を作る技術は次のアルバムで大きな花を咲かせるようになります。一時MTVの企画で火がついたアンプラグド企画もツェッペリンが存在していたら、面白い企画ものになっただろうになあと思うほどです。

 



無題ドキュメント


特報!
 このたび、ジミー・ページ、プロデュースによるリマスター盤の発売が1枚目から3枚目(I-III)までされることになりました。
 完全未発表の超貴重な音源を初めて追加収録。ブックレット、DLカードなど特典満載の超豪華限定BOXも含め、 初期アルバム3作、各3パッケージという豪華な代物。

 マニアなら是非コレクションに加えたいシリーズですね。

 レッド・ツェッペリンIII