PERFECT STRANGERS LIVE / DEEP PURPLE(紫の奇蹟/ディープ・パープル)

2020年5月7日

 

PERFECT STRANGERS LIVE /DEEP PURPLE

1. Highway Star

2. Nobody’s Home

3. Strange Kind Of Woman

4. A Gypsy’s Kiss

5. Perfect Strangers

6. Under The Gun

7. Knocking At Your Back Door

8. Lazy~Drums Solo

9. Child In Time

10. Difficult To Cure~Keyboard Solo

11. Space Truckin’

12. Black Night

13.Speed King

14. Smoke On The Water

 何を思ってか、再結成後のディープ・パープルのライブDVDが発売された。その名も“PERFECT STRANGERS LIVE(邦題“紫の奇蹟”)”1984年1212日のオーストラリアはシドニーのライブ映像ということで、映像は4:3画像になってます。しかし、ディープ・パープルでリッチー・ブラックモアもイアン・ギランもいるライブ動画でまとまったものというと1972年にデンマークのテレビ局が撮影したカメラショット最悪のものと、再結成後でリッチー・ブラックモアが脱退直前の画像も汚く演奏も酷いものであるから、往年のファンにとっては非常にありがたい映像であると言えるでしょう。
 しかも、DVD以外に2枚組のCD付き(演奏自体はDVDと変わりないもの)というバージョン(さらに3枚組LPまでついた通販専用のバージンもあるにはあるようですが、これはまさにマニア向け限定商品)もあります。

 私はDVDさえあれば問題ないのでCDなしタイプをゲットしました。アメリカ盤も出ています。発売当初は日本機材では見えないリージョン1でしたが、今ではリージョン・フリーになったので、問題なく日本の機材でも再生可能です。ただし、日本語字幕はついていません。日本盤のみ、ありがたいことに翌日の“Highway Star”も特別にボーナストラックとして収録されています(本編の“Highway Star”が再結成インタビューの模様をバックに始まるかららしい)。

 1985年の来日公演をご覧になったかたはかれこれ30年近くも前のライブ映像を非常に懐かしい想いでご覧になられる形となりますが、この映像に収録されているライブはまさに再結成ツアーの最初の地、オーストラリアというせいもあってかステージは非常にシンプルで、日本公演であったようなレーザー光線による演出などは一切なし。しかし、それがかえって潔く、観る者もパープルのパフォーマンスに集中できていいようにも思えます。
 おそらくオーストラリアのテレビ局が地元のテレビで放送するために収録したものだと推測されます。

 オープニングの“Highway Star”から演奏もまとまっていて、イアン・ギランとリッチーが和気藹々と掛け合いをしているのがほほえましいです。リッチーのギターソロのフレーズをギランがリッチーと目と目を合わせて微笑みながらユニゾンで歌う姿は、これがかつて犬猿の仲だと言われた二人かと思えるくらいです。

 実は当時ディープ・パープルの再結成を一番望んでいたのはリッチー・ブラックモアのようで、デビッド・カバーディルとの再結成はあり得なかったようです。RAINBOW時代にリッチーがロニー・ジェイムス・ディオの首を切った時も、後任として参加を望んだのはイアン・ギランだったようで、ギランはその要請に対して「むしろ、俺のバンドGILANに参加してくれるのだったらありがたく迎えるよ」と答えて、その話は消え、結局グラハム・ボネットの参加が決まったと言います。

 イアン・ギランの場合、ステージでのしゃべりにはかなりの笑えないトークがあり、この日も「今日はいろんな国の言葉で曲名を紹介する。まずはフランス語で・・・」とかいいつつ結局、全部英語で紹介しています。毎回、この手のギランの笑えないギャグには失笑するしかない。
 しかし、冷め切って分かれたはずの夫婦が久々に再会して意気投合したかのようなギグには、時をおいて良かったなと思って観てしまうのです。“Strange Kind Of Woman”のギター・ソロ部分では、ギランがソロで参加した“Jesus Christ Super Star”のフレーズを弾き始め、ギランがそれに合わせて歌い出すような場面もあって、この時期は本当に和やかだったのだな(1985年の来日公演でも同様でギランは何度もリッチーに向かって笑いながらお辞儀をしたり、二人で手を合わせたりしていたのを思い出します)。

 パープルのマネージメントが目先の金儲けだけに目がくらまずレッド・ツェッペリンのように長期的な視野でバンドを続けさせるつもりならば、コンサート、コンサートの繰り返しで疲れたメンバーにはしっかりクールダウンの期間を置き、リフレッシュできていればグループはもっと長続きしただろうにと思ってしまいます。

 収録されている曲は1985年の日本公演とは若干違います。日本公演では日本人を歌った歌ということで“Woman From Tokyo”をアルバム・バージョンで演奏(しかも、“Tokyo”部分をトカヨウと聞こえるように歌ったアルバム収録時とは違い、ちゃんとトーキョーと発音してました。その後のアメリカ・ツアーとかでは“Woman From Tokyo”は演奏しても、途中のスロー・部分を省略したシングル・バージョンで披露)する代わりに“Speed King”を演奏しない形でした。個人的には、“Speed King”も聴きたかったです。

 特記すべきは、やはりリッチー・ブラックモアのノリの良さでしょう。観客を煽るように左手を突き上げるようなポーズはリッチーの気分がいい証拠ですが、このコンサートでは何度もそういうポーズが見受けられます。ギターをエクイップメントボックスにこすりつけるようにして観客を煽るようなしぐさも気分が高揚している証拠でしょう。
 リッチーって古い曲ほどフレーズを変えて好き勝手に編曲して演奏するので楽しいですね。
 ギランも喉の調子がよく、“Child In Time”ではファルセット部分はエコーをかけてごまかしているものの、(10年前の声からすると衰えはあるものの)高音の伸びもかなりスムーズに出ています。

 画像的には焦点がぼやけるような部分があるものの、リッチー・ブラックモアのプレイをしっかりと捉えてるので、リッチー・ファンをがっかりさせることはないでしょう。

 イアン・ペイスとロジャー・グローバーのリズム陣は相変わらず鉄壁だし(ロジャーはRAINBOW時代からの長いつきあいなのでリッチーもやりやすいことでしょう)、ワンパターンのソロでつまらないジョンも、キーボード・ソロはクリスマス・シーズンにちなんだ曲を入れて、客席から歓声を浴びているし、メンバーも観客も十二分に楽しめたライブだったことでしょう。

 特に“Smoke On The water”の盛り上がりはすごく、なぜかエンディングではリッチーが背中にもう1つのギターを背負っているのが疑問ですが・・・(笑)。

 あなたがディープ・パープルに興味があるなら是非観ていただきたいDVDです。